主に小説の更新を中心に、日々の事やゲームの事を綴っています。
スポンサーサイト

-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑

歌雪の手記外伝-カセドリア独立記念祭-

2008-03-16 Sun 20:32
 朝とも昼ともいえない時間帯、私はベッドの上でようやく体を起こした。
 ファンファーレや笛の音が高らかに響き、歓声が上がる。老人も子供も大人も、みんなが一緒になって騒いでいる。
 ちょうど今日で12回目を向かえるカセドリア連合王国の独立記念祭はそれはたいした盛況ぶりである。

 露店も立ち並び首都アズルウッドでは酒が振舞われさまざまな食べ物が売られ、誰もが今日の日の平和を喜んでいた。
 私の今日の予定は昼前に一つと、夜にもう一つ。開いた時間をどうすごすか考えながら、私は取材の準備を整えることにした。

「お嬢ちゃん、買ってかないかい?ヴィネル島でとれて輸送されてきたばっかりの甘い果実だ、美味いぞー!」
 客引きに苦笑しつつ一つだけ購入し、王城前の広場へと足を運ぶ。あ、これなかなかいけるなぁ。
 王城前は多くの兵士たちでにぎわっていた。それもそのはず、今日はティファリス聖女王のスピーチがあるからだ。戦場で戦うものの大半にとって憧れであるティファリス聖女王と、その側近にして傭兵将軍であるウィンビーン、その二人を一目拝もうと集まってくる兵士は毎年減る事をしらない。むしろ増えるばかりの気がする。
 取材の許可は取ってある。といっても、写真数枚と、スピーチの内容について書くだけだが。それでも、専用の席を用意してもらった。記者ならではの特権といえる。
 始まったスピーチ中に数枚の写真を撮影する。写真機は感光クリスタルという特殊に処置したクリスタル片を使う。存在をつかさどるクリスタルにとって、景色、風景を記録することなどたやすいのだ。
 10分ほどのスピーチが終わり、ティファリス聖女王が王城の奥に下がっても歓声は止まらなかった。
 私は記事の内容を大まかに手帳にまとめると感光クリスタルをしまい王城を後にした。

 12年前の独立戦争のときから考えると、ずいぶんとカセドリア連合王国内は平和に、過ごしやすくなった。
 その変化は素直に喜ぶべきものだ。今はエスセティア大陸の覇権をめぐって五国が互いに争っているが、いつの日か争いのない・・・マルクティス・エスセティア王が統治していたような時代が再び訪れるのだろう。
「まったく予測がつかないわね」
 どこの国が統治するのか、という意味だ。
 個人的に平和になるのならどこの国が統治しようとかまわない。というのが私の立ち位置だ。ただ、私はこの土地から離れることはないだろうが。
 知人とすれ違いながら、夕暮れまでを街の中ですごした。
 さて、そろそろ今日の残った用事を済ませに行こう。

 私にとっては、昼の取材よりもこちらのほうが何倍も大切なのだから。


 街外れの墓所に、それはひっそりとたたずんでいた。
 小さな墓には、私にとって大切な人の名前が刻まれている。

 レイリア・スプリングス
カセドリア連合王国暦0年没 
享年23歳

「久しぶり、レイリア」
 最初は、向こうがむやみやたらと気にかけて絡んでくるだけだった。けれど、いつしかそれは日常となり、変えがたい大切なものになっていた。
 気づいたのは、失った後だったけれど。
「あれから、もう12年だよ・・・早いものだね」
 もってきた花束を供える。返事がないことはわかってる。
 おそらくこれはただの自己満足に過ぎないのだろう。そして同時に、懺悔でもあるのだ。
「お祭り、すごいにぎやかだったよ」
 楽しめた気はしないけど。
「一人だったけどね」
泣いてはいけない。どこかにある喪失感、それはほかならぬ自分が生み出したものだ。
 話すこともほとんど思いつかず、私はそれだけを言って、そこを離れることにした。
「今年も、忘れてなかったみたいだな」
「クルト、か・・・忘れるわけ、ないよ」
 背後からかけられた声、誰だか振り返るまでもなくわかる。
 お互いにかける言葉もほとんどない。私の去り際に彼は一言。
「ま、来年も忘れずにこいや。あいつも喜ぶだろ」
 とだけ言われた。
 果たして私に、その資格があるのだろうか。それともこれは罪滅ぼしなのだろうか。
 気がつけば日は沈み、月明かりが墓所を照らしていた。
スポンサーサイト
別窓 | 小説・ノベル | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑

<<24いんちわいどもにたー | 蒼月雪歌の活動録 | というわけでデジカメでとってみた>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL


FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 蒼月雪歌の活動録 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。