主に小説の更新を中心に、日々の事やゲームの事を綴っています。
スポンサーサイト

-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑

歌雪の手記三話

2008-03-10 Mon 14:11
時刻はちょうどお昼前、カセドリアの首都アズルウッドは今日も多くの傭兵達が、一般市民と入り混じって街を行き交っている。
自宅の机で必要な資料をまとめていた私は、お腹がすいたこともあって食料の買出しに出ることにした。
森のそばに作られた首都は、心地よい風が流れる、すごしやすい所だ。季節はちょうど変わり目で、それほど日差しが強くないのもその一要因であることは間違いない。
戦時中の食料の買出しで大量のベーコンやパンを抱えている傭兵や、夕食のために食材を買い出している主婦など、街の人の顔ぶれはさまざまである。
私はお昼は果物などで済ませることが多い。果物を扱っているのは森区と呼ばれる地域である。住居の多い壁区を通り過ぎ、森区へと向かう。
森区はそのまま外に近いため、傭兵の数はこちらが圧倒的だ。
疲れた体を休めるように木陰に座り込んで果物を齧っている女スカウトや、武器の手入れをしている男ウォリアーなど、壁区とは雰囲気が異質で・・・正直私は好きじゃない。
さっさと買い物を済ませて帰ることにしよう。
好きな果物を、面倒だから夕食の分まで買い込んで、私は帰路についた。
そんな中、耳についた声があった。
「これからブリーフィングルームにして熟練者による講習会を行います!参加希望者の方は集まってください!」
呼びかけを行っているのはかなり経験をつんでいるように見えるソーサラーだった。装備からでは正直、何を得意とするのかはわからない。しかし、薄い軽装束に杖を持っているのなら間違いない。アドミンシリーズと呼ばれる白と茶色を基調とした服は、ソーサラーのために作られた衣装だ。帽子はゆったりとしているし、戦争にはいささか合わないようにも見えるが、魔力を増幅する特殊な繊維を編みこんで作られている。手に持っている杖、ファラオとよばれるそれはかなり使い込まれている。もっと高位の杖だって扱えるだろうに、だ。何かこだわりがあるのかもしれない。まぁ、戦場を駆けるものにとって、事情というのはさまざまだから、踏み込んではいけない。それは暗黙の了解だ。
彼はあっちこっちに呼びかけながら森区を忙しそうに駆け回っていた。参加者はぼちぼちというところだろうか?
まぁ、私には関係のないことだ。そのまま帰ろうとした矢先。
どんっ・・・ぐしゃ・・・。
突然横から勢いよくぶつかられた。前を見ないで走っているのか、一般市民がジャマだと思っているのか・・・おそらく前者だろう。
傭兵たちが守ろうとしているのは家族や子供、恋人であるなどで、一般市民に対してはむしろ優しい傾向がある。
「す、すいません。大丈夫ですか!?」
「大丈夫です。気にしないで」
買い物を拾い上げる。丈夫な皮を持っていない果物がいくつかつぶれた。しかしまぁ、こういうこともある。気にしないことにしよう。
そう思っていたが、彼は違っていた。というより、丁寧だった。すごく・・・。
「すいません、弁償を・・・あ、いけない。もう講習会を始めないと・・・すいません、この埋め合わせはいつか必ずしますっ」
そういって彼はあわてていってしまった。まぁ、誠意は伝わるし。もともとそれほど気にしていなかった。彼が行くのを見送って、私も改めて帰路に着いたのだ。

―同日、夕刻―
資料の整理がひと段落し、私は体を伸ばすことにした。夕刻の首都の風景はとても綺麗なのだ。持ち運びのしやすい果物を2~3個もって、私は壁区のとある樹木の下に座り込んだ。少しはしたないのだが、ここから見る景色が一番好き。
夕陽を受けた石造りの建物は不思議な色合いをかもして、まるで何かの物語の主人公になったように思えるからだ。
昔はこんな時間を楽しもうなどと思ったことはなかった、年をとった・・・ということなのだろうか・・・いや、12年前、私は12歳だったわけだから、そんな年食ったわけでもないんだけどね。いや、倍になってるんだからトシくったといっても問題はないのか?
そんなことを考えながら、色を深く暗くしていく空を眺めていた。
「みつけたっ!」
突然そばでそんな声が聞こえた。聞き覚えのある声に振り向くと、昼間にぶつかったあのソーサラーがそこに立っていた。
「よかった、探しましたよ」
「ぁ・・ぇ?昼間の・・・なんで?」
「ほら、昼間のお詫びがまだじゃないですか」
驚いたことに・・・彼は講習会が終わってからこのかた1時間ほど、私のことを探して首都を歩き回っていたのだという。まさかあの言葉が本当だとは思わなかった。社交辞令・・・だとおもっていた。
彼はお詫びに、夕食をおごってくれるといった。首都で最高級レストランの前につれてこられて、正直面食らう。こんなところ、入ったこともない。

「わざわざここまで気を使わなくてもよかったのに」
「それでは私の気がすみません」
私は紳士なんですよ。と、彼は微笑みながら言う。なるほど。
物腰も、雰囲気も、確かにそうした空気を纏っている。
あいにくと私は本物の紳士というものを見たことがないので、彼がそうなのかはわからない。そもそも本物の紳士ってなんなんだろうか、と思ってしまうが。
その夜はそのまま料理を食べ、ワインを飲んで、延々語り続けた。私の仕事のこと、彼の普段の過ごし方。お互い、まるで共通点がなかった。
彼はyunomiという名前らしい。変わった名前だなとおもったが、あえて口には出さなかった。
講習会は上手くいったらしく、彼は上機嫌だった。一通り話もしおえ、酔いが回った頃、レストランを後にすることになった。
「ふわぁぁ~・・・こんなに飲んだの、ひさしぶりぃ・・・♪」
まずい、足がおぼつかない。酒は飲んでも飲まれるな、というが、めったに飲めない高級なお酒で、かなり美味しかったためについハメをはずしすぎてしまった。
ふらふらしている私を、彼は軽く支えてくれた。ソーサラーとはいえやはり男性、力はそれなりにあるみたい。
「家までお送りしますよ、このまま別れるのは少々心配です」
「ん~・・・それじゃぁ、お言葉にあまえちゃおっかなぁ♪」
彼の肩をかりながら、すっかり人気のなくなった夜の首都を歩く。
普段はあまり歩かないこの時間帯の風景も、なかなかにいいものだ。
壁区にある私の家はそれほど遠くはない。すぐに家の前まではたどり着いた。
「ん~、ありがと。そうだ、ちょっとまってね」
ちょうどいいからと、私は自室の部屋の奥からあるものを持ってきた。
「これ、私はもう使わないから。よければもらって」
そういって手渡したのは赤い水晶で出来たペンダントだ。
「これは・・・まさか、レッドクリスタルですか?」
「そ、魔力を増幅する力があるってきくから、あなたにちょうどいいでしょ?」
彼が特定の杖にこだわる理由、それがなんとなく予想できてしまったから。そうでなければこんな高価なものを渡す気にはならなかっただろう。彼は受け取ることを渋っていたが、一つの条件を出すことでそれを承諾した。
その条件とは、生きて帰ってくること。
「判りました・・・それまでの間、これはお借りします。必ず返しに来ますね」
彼を見送ったあと、私はそのままベッドに倒れこんだ。
翌朝目が覚めてから、この手記を書き残す。

私室に、私と一緒に写る彼の写真が、壁にピンで留められている。
さて、次再開できるのは・・・いつだろうか。

yunomiA1DCB2CEC0E3.jpg
スポンサーサイト
別窓 | 小説・ノベル | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑

<<歌雪の手記、一話から四話 | 蒼月雪歌の活動録 | 歌雪の手記二話>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL


FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 蒼月雪歌の活動録 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。