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歌雪の手記一話

2000-12-04 Mon 10:10
今まで、多くの土地に赴き、さまざまな人々と出会ってきた。
思い返せば出会いは楽しく、別れはさびしいものばかりだ。
そんな、今までに出会った人たちのことを忘れないために、この手記に書き残しておこうと思う。
某月某日 メルフェリア新聞社カセドリア支部の自室にて。

時期は初夏、強い日差しが燦々と降り注ぐ。渓谷の、ちょうど日陰になる水場で私は休憩をとっていた。
意外なことに、水場に動物達の姿はない。この暑さでも平気なのだろうか?そんなことを考えながら空を見上げれば、雲ひとつない青空が広がっていた。
程なくして休憩を終わらせる。ざぁ、と吹き流れる風が心地よかったが、天気は急に曇り始めた。もともと山間の天候は変動が激しいものだが、それにしてもいささか急な変化だった。
あわてて支度を整え、移動の準備をしていたところに、彼はやってきた。
息は荒れ、山間の間を無理やり強引に抜けてきたのだろう、服のいたるところに木々の破片や葉っぱが絡みついていた。
背負っている両手斧、フェンリルは使い込まれているのが一目でわかるほどだった。その彼がこんなに取り乱しているのが不思議でもある。
「おい!お前も早く逃げろ!」
そう、一言だけ言い残し、彼はそのまま駆け出していた。私もあわててそれにならう。
私は短剣と弓を扱うスカウトだ。ウォリアーである彼が恐れる対象がソーサラーであるというのなら、私が何とかできるという自信はある。
しかし、彼の恐怖はそことは違う部分にあるように思えた。ならば、彼に従って逃げるほうが安全だろう。私はそもそも本職が記者であるゆえに、厄介ごとは苦手だ。
足には自信がある、すぐに彼に追いつくと私は何があったのか聞くことにした
「ちょっと!一体なにがあったのよ?!」
「いいから逃げろ!」
そのまま私は彼と一緒に、各地に有る拠点の前まで逃げたのだった。
かなりの距離の全力疾走。正直、きつい。ウォリアーである彼もかなり疲れていたが、私の疲労はそれ以上だった。ウォリアーと体力勝負なんていうバカな真似は今後絶対にしないと心に誓う。
しばらくの間、お互いに荒い呼吸を整えることにだけに意識が奪われる。呼吸が落ち着いた頃、先に口を開いたのは彼だった。
「あんた・・・何者だ?」
「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・ただの記者よ・・・」
「嘘つくな、ただの記者が全力で走ってた俺に追いつけるわけがねぇ」
あいにくと嘘ではないのだが、あまり信用はされなそうだった。とはいえ敵意がないとわかれば彼は大して気にしなかった。
彼は自分のことを「イルフリート」となのった。カセドリア所属のそれなりに有名なウォリアーらしい。過去に新聞社で名前を聞いたこともあったが、私の担当とは異なったため名前ぐらいしか聞き覚えはない。
彼はこのゲブランド所有の土地、ゴブリンフォークに宣戦布告するためにやってきたという。しかし、それならば何から逃げていたのだろうか。
「記者か、この土地には何をしに来たんだ?」
「・・・さて、風の向くまま気の向くまま、ありのままの世界を伝えるために?」
「・・・よく判らんな」
「新聞社でも変わり者扱いよ、大抵は戦争の話題ばかり取り扱うからね」
微妙な、ほんの僅かな・・・空白。そして、彼は有る御伽噺を始めたのだ。
「新聞のネタに困ってるのなら、戦場の御伽噺をしてやろうか?」
「あら、面白そうね。是非聞かせてほしいわ」

ことの始まりは、そう・・・戦争が始まって間もなかった頃だと聞く。
あの頃はまだ、お互いになれないこともあってな、結構深い傷を負って野戦病院に運び込まれる奴が多かったんだ。
酷いときは野戦病院に数十人が集まることもあってな・・・その時代に俺はいなかったが、話だけは何度も聞いた。
野戦病院だからな、野外なんだが。夜中に痛みで目を覚ます奴も多かったそうだ。
そんなとある夜の出来事さ、そいつが目撃されたんだ。
黒い衣を身に纏い、人間の何倍もある背丈をしながら、下半身がない・・・そんな化け物だ。
手にはまるで闇を集めて作ったような黒い巨大な剣をもっていてな、深くかぶったフードからはほの暗い眼光だけが覗いている。そんな奴が、野戦病院のすぐそばにいる、って騒いだ奴がいるんだ。でも、ほかの誰も見ていない。
あんまりなことと、その男の騒ぎ方に驚いて目を覚ましたほかの何人もがクチをそろえて、見ていないっていうんだ。
最初は、そいつの傷が酷いから見えた幻覚だろう。ってことになった。
しかし、その翌日も、翌々日も、見たという奴はどんどん増えていったんだ。
やがて戦争が終わり、誰もが故郷へ帰るとこの噂はぱたりとやんだ。
おかしなものだろう?
故郷に帰ったぐらいで傷が治ったりはしないんだから。
そして生まれたのがこの話、戦場には死を運ぶ黒霊がいる。

「・・・ねぇ、もしかして」
「言うな、俺は信じてはいないんだ・・・こんな与太話は・・・な」
彼が見て、そして恐怖して逃げたものはなんだったのか。
それを私は確認していない。だってそのほうが、面白そうではないか。
私はこのとき、彼とカセドリアの首都で再会したら、一杯おごると約束した。面白い話を聞かせてくれたお礼に、と。
さて、そろそろ出かけることにしよう。待ち合わせの時間には程よい頃合だろう。
最近首都に出来たばかりの酒場で、彼と飲み交わす約束を果たしに行こう。
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