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イグドラシルの継承者~大樹編プロローグ7~

2009-04-14 Tue 18:41
 考えてみればおかしいことにはもっと早く気づくべきだったのだ。
 私はもともと他人とのかかわりというのが苦手だったのもあって村の外れに家を持った。だというのに私は彼女だけは気にし続けている。
 まるでそれが当たり前とでも言うように。
「貴女は・・・ユカリは・・・何者なの?」
「ん?んー・・・難しい質問ね」
「あの肖像画との関係は? その杖をまるで昔から扱いなれているように振るえるのはなぜ? ううん、一番大事なのは・・・私は貴女とどういう関係なの?」
 ユカリはしばし思案してから、なにから話せばいいのか迷ったような表情をしながらベッドから腰を上げた。
 そのまま部屋のドアを開けて人が居ないことを確認すると、今度は窓から外を確認し、そして窓を閉めた。
「貴女が過去の記憶を取り戻せばわかるとは思う。あえて今聞きたいというのなら、そうね・・・私はユリア・シャープムーンの生まれ変わりみたいなものよ。ユリアとリーシア・・・貴女の前世は親友であり、最高のペアだった」
 いつの間にやら注がれたお茶を私の前に差し出しながら、そうユカリは告げた。正直な話、それが私たちの関係というのは違う気がする。
「その関係が引き継がれるとでも・・・言うの?」
「さて・・・それはどうかしらね。少なくとも私は、貴女の記憶が戻ればそうなると思ってる」
「・・・記憶が戻ったら、今の私はどうなるの?」
 私の恐怖のモトがそこにあると、口にしてから気づいた。もしも記憶が戻ったら今の私はどうなってしまうのか。
 ・・・消えてしまうのだろうか・・・だとしたら、そんなことは絶対にお断りだ。
「人格が消えてしまう、というのはありえないでしょうね。二つの記憶が統合されて、多少価値観や考え方は変わるかもしれない、人格にも多少影響はあるかしらね・・・でも、それで自分の意識が消えるということはありえないわ。だってどちらも・・・貴女なんだから」
 その答えに私は内心でホッとした。正直今でももう一人の自分という存在が怖いといえば怖い。しかし知りたくもあるのだ。彼女と・・・ユカリとそれほどまでに親密な仲だったという、リーシアの記憶を。
 それと同時に、一つの不安が芽吹いた。
 ユカリさん、貴女は・・・私を見てるんですか?それとも・・・私の中に眠るリーシアを見ているんですか?
 それは、考えてはいけない疑問だったかもしれない。
 心臓はドクンドクンと激しく脈動し、呼吸はひどく浅い。私がそれだけ動揺しているというのを改めて自覚する。だってこんなにも、胸が苦しくなるのだから。
 冷静さを取り戻すために出されたお茶を啜りながら、私は呼吸を整えることに集中した。お茶は程よい薄さに調節されていて、これなら今飲んでも寝るのに差し支えないだろう。
 一つだけ、肖像画の疑問に答える解があったけれど、私はそれを無意識に振り払っていた。そんなこと、あるわけがないのだから。
「さて、どうしようかしらね。私としてはまだおしゃべりを続けてもいいのだけど」
「ユカリは・・・私のこと結構知ってるよね」
 好みなどを今まで散々言い当てられたのだ、否定はさせない。
「そうね、前世の記憶から片鱗が見える程度だけど」
「私は、ユカリのこと全然しらないんだけど?」
 私の台詞にユカリの表情が一瞬固まる。ごまかすようにお茶を一口啜り、それから私の言った言葉の意味を悟ったのか、少し恥ずかしそうに自分のことを話し始めた。
 私はそれを聞きながら、時々質問を交えその夜をすごした。
 ほんの少しだけ、互いの距離が縮まった気がしてひそかにうれしかったのは、ここだけの秘密にしておく。

 朝の目覚めは緩やかで穏やか。森の中にある修道院はどこかしら故郷を感じさせる。
 私は緩やかに覚醒していく意識の中で、人の気配を感じて目を開けた。
 目の前に、ユカリの顔があった。
 緩やかだった意識の覚醒プロセスは急激な覚醒により心拍数が急上昇する。状況が把握できないのだが私が起きたことに気づいたのか微笑むと何食わぬ顔でおはよう、と告げてきた。
「お、おはよう・・・」
 あまりのことに硬直していると、ユカリはベッドから離れ部屋の窓を開け放った。暖かな日差しが差し込んでくる、今日はどうやらいい天気らしい。
 と、そんなことを考える前に、なにをしていたのか確認しなければいけない。
「ユカリ、今なにしてたの?」
「別になにも、寝顔を見てただけよ?」
 平然と言うあたりさも当然のことのように思っているのだあろう。もしかしらユリアという人の記憶の影響なのだろうか。なんにせよさすがに恥ずかしい。
 次から宿は別室にするかとまじめに考えていると、ユカリはさっさと支度を整えてしまっていた。
 私もあわてて支度を整える。整え終わった頃にクラインが尋ねてきて朝食をご馳走になることにした。とはいえ、修道院の朝食というのはかなり質素で、昨夜の晩餐にはとても及ばなかったが。
 出発は昼前になり、クラインに見送られたまま修道院をあとにした。

 こうして、私の冒険の最初とも言える小さな旅は終わりを告げ、そしてこれから続く長い旅路が始まったのだ。
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