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イグドラシルの継承者~大樹編プロローグ6~

2009-04-08 Wed 03:00
 武器の種類も、その秘めた力も今まで露天や武器屋で見たようなものとは格が違うのはすぐにわかった。纏う魔力を恐ろしく感じるのは私が未熟だからだろうか?
 両手剣、片手剣、銃、斧、槍など、私に扱えないものが多く並んでいる。見回すと弓が目に入ったので近くに寄ってみる。すべてがまるで極上の銀でできているかのように見えるその弓に、形状だけだが私は見覚えがあった。
 聖弓ルドラ、弓使いの伝説とも言われる人物、ルドラが愛用したといわれる弓。
 その弓は人を癒す力があり、矢を番えて放てば風を切り裂いて飛ぶといわれる。一度持ってみたい、弓使いならばだれもが持つ欲求に、私も抗うことはできなかった。
 そっと弓に触れる。白銀色の柄は凛として冷たいようで、暖かさを感じる。不思議な感触だった。
 キィン、という澄んだ氷の割れる音がした。あわてて周りを見ても、何かが割れたような様子はない。もう一度弓に目を移すと、いつの間にか弓は私の手に納まっていた。
 手に取った記憶はない。
 不思議と手に吸い付く感覚。これほどのしつらえで作られた弓など私の腕ではおそらくまともに扱えないだろうに、なぜか魅了される。
「あぁ、フィネにならその弓はちょうどいいわ」
 いつの間にか、身の丈よりも長い杖だか棒だかわからないものを携えてユカリが私の背後に立っていた。赤い宝玉が二つ埋め込まれ、青とも緑ともいえない不思議な色をたたえたそれをまるで長年使い続けた武器であるかのように携えている。
「聖弓ルドラ、癒しの力を秘めた神の祝福を受けた弓。貴女の腕でも扱えるはずよ、弓が力を貸してくれる。痛みを鎮めてくれるはずよ」
 半信半疑に私は弓を構えた。普段めったに弓を弾かない私は、恐る恐るその銀糸のような弦を弾いた。私の意志に呼応するかのように弓は答えその身を反らす。腕の痛みは不思議と静かなものだった。
「あと、これを持っておいて」
 そういって渡されたのは、一振りの鞭だった。鞭には詳しくないものの、それがただの鞭でないことは明白だった。継ぎ目のないその身は一本の長い何かから作られていることは明白だ。しなやかさも弾力も、並の素材では出しえないものだろう。弓の弦に使えばおそらく最高級品と同等か、それ以上の出来に仕上がるだろう。
「私は・・・鞭は扱えませんよ」
「ええ、今はね。なぜかわからないけど渡しておいたほうが良い気がしたから今渡すの。邪魔にはならないだろうから持っておいて」
 確かに、腰に括り付ければ邪魔にはなるまい。重量もそれほどでなく、何かしらほかのことにも使えそうではある。ロープ代わりに使えなくもなさそうだ。
 私は腰のベルトにその鞭を括り付けておくことにした。
「クラインも扱うものは決まったようだし、ひとまず出てもう一度封印することにしましょうか」
 奥から出てきたクラインが手に持っていたそのナックルは不吉に禍々しいオーラをまとっていた。魔に属するか、あるいはそれに近しい魔力を持っているのだろう。しかしその魔力に汚染されるよりも、清浄さのほうが魔力を制圧しているように感じる。
 やはり、それだけの力と素質を兼ねそろえたひとかどの人物ということなのだろう。

 聖母像の封印が再び施され、冷たい空気が部屋を満たすまでにさほど時間はかからなかった。クラインは手に持ったナックルの感触を確かめながら厳しい顔をしている。
「所でユカリ様、それはもしかして・・・」
 クラインがユカリの持っている杖に目を向ける。肖像画にある女性、ユリアが持っているものと同じ用に見えるそれはやはり特別な品なのだろう。
「聖杖フベルゲルミル、杖でもありメイスでもある、私のもう一つの相棒かな」
 軽く杖を振るっただけなのに風を切る音は重い。それがかなりの重量を持っている事をあらわしていた。それを軽く振るう彼女の膂力も相当のものなのではないかと思う。
「まぁ、この杖のことはどうでもいいわよ。やることも済んだことだし、これからが本番。あと二人とも、武器の力に振り回されたり過信するのではなく、腕に磨きをかけることを忘れないでね」
「言われるまでもないな。今の俺ではこの武器の力を半分も引き出せる気がしないさ」
「殊勝なことで」
 二人のやり取り、それだけを見てもそれなりに親しい間柄というのがわかる。出会ってまだ二週間も経っていない私がそれを羨むのはおかしいのかもしれないけど、胸が小さく疼いた気がした。
 すでに日が傾いていたことから泊まっていくように進められ、晩餐に招かれて久しぶりに旅食以外のものを口にした。質素でこそあったものの上手く味付けされたそれは旅食とは比べ物にならない味だった。
 ハンターとしては野宿に慣れてこそ居るものの、やはりベッドの方が寝心地は格段によい。客室として用意された部屋は一室で小さな部屋だがベッドは二つ用意されていた。シーツも綺麗に整えられているあたり、きちんとした生活をしているのだと思わされる。
 湯浴みを終えた私たちはベッドに腰掛けてそれぞれ思い思いにすごしていた。
 私は手にした弓、聖弓ルドラの手入れを。ユカリは不思議な杖である聖杖フベルゲルミルを、それぞれ長らく封印してあったため、手入れしなおしているところだった。
 おそらく、クラインも今頃はあのナックルを手入れしていることだろう。
 私は杖の手入れをしながら、横目でユカリのほうを見ていた。気にかかることが多すぎて頭の中はこんがらがったままだ。
 ユカリさんは・・・あの肖像画とどんな関係があるんだろうか、とか・・・
 一体千年前の戦争をどこまで知っているのだろうか、とか・・・
 一体、私は何者なのだろうか、とか・・・
 考えても答えも出ないままの問題が多すぎて、正直思考を放棄したくなるほどだ。
「何か、気になることでもあるの?」
「ぇ?」
「手、止まってるわよ?」
 言われて、弓を手入れする自分の手が止まっていたことに気づいた。
 どうやら考え事のほうに意識を取られすぎたらしい。見ていたことに気づかれて私は正直恥ずかしさが先に立った。もともと一人で森を駆け抜けることが多かった性分からか、人との付き合いにはなれていないという自覚もある。少々気まずくなってしまったまま、わずかな時間、沈黙が続いた。
「気になってること、なら・・・全部ですよ」
 言ってから気づいた。
 私は、なぜ彼女をここまで気にしているのだろうか、と・・・。
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