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イグドラシルの継承者~大樹編プロローグ5~

2009-04-04 Sat 16:57
 応接間に通された私は簡素なつくりの部屋に目を向けていた。
 立派に作られた修道院であったが、内装はそれほど豪華ではない。というよりもむしろ簡素ですらある。質素と言うほうが適切かもしれない。
 必要以上にお金をかけず、それでも信仰を強調するように工夫されているような・・・あえて言うならば信仰とは物質的なものではないと語るような空気をしていた。
 どちらにせよ私がとやかく言うものでも気にすることでもないだろう。私は意識を目の前に居る男性、クラインに向けなおした。
「質素なものだろう?」
 心を読まれたかとおもった。いや、実際のところ考えの大半は読まれているのかもしれない。私はさぞかし周囲を珍しそうに見回していたのだろう、苦笑の色が見て取れた。
「質素と貧乏は違いますから」
「はっはっは、いいことを言う。貧乏は使う金がないが質素は金の使いどころを知っているから成せることだ。金の使いどころを知らぬ金持ちは成金という。まぁ、この内装はこの修道院が設立して以来ほとんど変わっていないんだ。修道院長には常に修道院を設立した方の遺志を継いだ方が成る。だからかも知れんな」
「・・・立派な人だったんですね」
 クラインの語りからも、纏う空気からも、初代創設者である人物を尊敬する念がこめられているのを感じた。
 この歴史ある修道院の設立者など、遠い・・・それこそ、気の遠くなるほど遠い時代の人であろうにその遺志は間違いなく受け継がれているのだ。私はそれがうらやましいとおもう。
 どんな人だったのだろうか・・・。
「その、初代院長ってどんな方だったんですか?」
 私はなんとなしにそんなことを聞いていた。聞かれてクラインは私の後ろを指差して言った。
「後ろにかかっている肖像画が初代院長だ。名前は、ユリア・シャープムーンという。およそ千年ほど前の人物だ」
 言われて私は振り返って肖像画を見て、そして絶句した。
 そこにある肖像画は、まるでユカリさんの生き写しだったからだ。瞳の色、髪の色、纏う雰囲気、同一人物だといわれればそのままうなずいてしまうほどだった。
「似ているだろう?」
 その言葉に私はそのままうなずいていた。どこか、ユカリさんだけが居心地の悪いような、そんな不安定な態度を取っていた。そんなユカリさんを見ながら、私は頭の片隅に何かが引っかかっているのを感じていた。なんだっただろうか・・・私は、ユリア・シャープムーンという名前を知っている気がする。
 ユカリさんをみて、これまでの経緯を思い出して、そして気づいた。
 私の持っているロザリオの後ろに刻まれていた名前こそ、この修道院長その人ではないか。そしてユカリさんがその生き写しであったというのはいったいどういうことだろうか。
 不意に、頭の奥が痛んだ。まるで、ない記憶を思い出そうとするような、軋むような痛みだった。その痛みはすぐに霧散する。まるで元から痛みなどなかったかのように。
「さて、フィネ。ここにつれてきた理由は二つあるけど、一つは彼に会ってもらうためなのよ」
 どういう意味なのかとしばし考えたが、思いつく理由など一つしかない。
 ギルドへの所属の話なのだろう。私がするには会わない気もするのだがユカリさんはどうやらこうしたところの形式にこだわる面があるのだろう。
 私としても問題はないだろうと判断し、ポーチからエンペリウムで作られたギルド証となるペンダントを手渡す。同じエンペリウムから作られた結晶同士を持つものは遠隔通信が可能になると言う代物だ。ほかにもいくつかの魔法的効果が付属されている。
「ずいぶんあっさりですね」
「問題ないと思うし、ユカリが選んだ人選なら間違いないかと」
 その言葉にクラインは納得したのか頷くとそのペンダントを首に下げる。
「ところで、もう一つの理由ってなんなの?」
 私の質問に対して、ユカリは厳かに静かに、それでいて凛とした声で告げた。
「封印されている神器開放とそれを継承してもらうこと」

 修道院の中心部にある聖母像は厳かに佇んでいる。その像の前にユカリが立つとそれだけで像の神聖さが薄れたように感じられた。
 そして、あろうことかユカリはナイフを取り出した。
 指を軽く切り、神像の足元に垂らす。その行為にクラインが多少あわてたが、意味があるのだろうと思いなおしたのかすぐに平静を取り戻した。本来ならばありえないような行為であるが、ことこの相手についてその考えはあてにならないということだろう。
「ユリア・シャープムーンの名と血の契約において、静謐に潜みし封印よその門を開けよ。天と地、神と人、その間に宿る封印よ、わが名と血を鍵として、封じられし禁忌を開放せん」
 直後、聖堂内に満ちていた空気が流れた。聖母像が音をたてながら動いていく。その下に階段が姿を現していた。
 一番驚いていたのはクラインだ。おそらく知りもしなかったのだろう。信じられないものを見るような目でユカリを見ていた。
「やはり、ユカリ様はその血筋という・・・ことですか」
「まぁ、そんなところよ・・・さ、行きましょう」
 小さな蜜蝋の明かりを頼りに聖母像に封印されていた階段を降りていく。
 空気は冷たく、肌に絡みつくように濃厚だ。やがてたどり着いた先、気づけば目の前に開けた空間があった。足を踏み込むと突然に光がともった。おそらく魔法的な仕掛けがしてあるのだろう。
 明かりがともった先には、さまざまな武具が、それこそ信じられないほどに蓄えられていた。神聖な武器も、魔を宿すような武器も、所狭しと並べられている。
 中には厳重な封印が重ねられている箱も置いてあり、中にはなにがあるのか気になるものすらもある。
「自分が扱えると思うものを選ぶといいわ。武具のほうが選ぶとも言えるけどね」
 長い年月を経た武器は魔力を備え、使い手を選ぶという話もある。おそらくユカリが行っているのはそういうことだろう。
 そう思っているとユカリは迷わず奥へ踏み込んでいった。その行動の迷いのなさに戸惑いながら、私も封印された武具を見て回ることにした。
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