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イグドラシルの継承者~大樹編プロローグ4~

2009-04-03 Fri 02:30
 ルーンミッドガッツ王国国王、トリスタン三世との謁見において、私は正式にギルド―イグドラシルの継承者―の指揮権限を継承した。
 それまではどうやらユカリさんが一時的に権限を保持していたらしい。継承して何より驚いたのがその資金力と権限である。
 なんとトリスタン三世直属にあたり、資金力については国からの支援を受けられるらしく、予算として回される金額は相当のものだった。権限についても同等であり、有事の際には国王に代わって指揮をする権限すらも与えられていた。
 改めてこのギルドが、イグドラシルを護り、人魔大戦において指揮を担うギルドなのだという実感に押しつぶされそうになる。
 謁見が終わり王城の一室に案内されてから見たギルドの記録書に目を通すと、さらに信じられない事実を発見して私は面食らった。
 ギルド設立時期はルーンミッドガッツ王国暦の設立当時までさかのぼっていた。わずかであるが首都プロンテラの歴史をさかのぼるほどに古い歴史を持っていた。つまり、このギルドの初代ギルドマスターは千年前の人魔大戦を経験していることになる。ユカリさんの話を裏付ける記録だった。途方も無い歴史の前に私は頭が痛くなる。
 同時に、一つの疑問が浮かび上がる。
 現在のギルドメンバーは私とユカリさんの二人だけだ。それはメンバーリストから確認した。ともすれば、いったいユカリさんは誰から、そして何時からこのギルドのマスター権限を受け継いだのだろうか。
「フィネ、大丈夫? 顔色悪いけど」
「悪くもなりますよ。こんな歴史のあるギルド・・・各職業ギルド以外では見たことが無いですよ」
「そりゃ・・・グラストヘイム王国時代の遺物だもの」
 何か今とてつもない発言を聞いた気がする。ユカリさんはどうにも歴史にも相当詳しいらしい。少しだけ聞いてみたがどうにも現在のルーンミッドガッツ王国の各都市は古の大戦時代、グラストヘイム王国の生き残りによって作られた街なのだという。
 どうにもさっきから話が大きすぎてピンと来ない。歴史の勉強もしないとだめかなぁ、などと考えながらさらに資料をめくる。ギルドが保持できる最大人員は実に56名、各種ギルドスキルも整っていた。
 いったいどれだけの時間をかければこれほどまでに整うのだろう。きっと多くの人の意志、それこそさまざまな遺志の結晶なのだろう。
 無駄にするわけにはいかない。という思いがプレッシャーになる。目の前でユカリさんが、一人で気負いすぎないで、と言ったのが聞こえた。
 言われてみればそうだ。一人で背負えるわけが無い。だからこそ仲間を探さなければならないとユカリさんは言った。千年前の大戦の時にも多くの仲間がいたという。
 共に戦ってくれる仲間がいなければ確かに成しえないことだ。つまり、これから行うことは仲間集めということになる。
「ねぇ、フィネ。前から思ってたんだけどさ、そのユカリさん、ってのやめてくれない? さん付けされるの嫌いなんだ」
「ぇ、あ・・・うん・・・えと、それじゃあ・・・これからもよろしくね、ユカリ」

 二人で話し合った結果、プロンテラの南に活動拠点を設けることになった。正直受け継いだ資金をいきなり勝手に使うのは気が引けたが、活動内容からして独自の活動拠点を持つほうがいい、という意見には賛成だった。
 常に王城を出入りするのも面倒なのと人目があることから、同意せざるを得なかった。国王から許可をもらい、建築を生業とする人と数日間話し合った結果として、かなりの規模の活動拠点の建設が開始された。
 おそらく拠点が出来るまでに数ヶ月はかかることだろう。その間に出来る行動を行うことにした。
 ユカリが近場で片付けたいことがあるといってプロンテラから東を目指すことになった。そこになにがあるのか私は知らないが、おそらく何かしら重要なものがあるのだと思う。
 一人でない旅の楽しさというものをこの一週間ほどで十分に知った私は、その過程を楽しもうと思った。おそらく、急いでも仕方の無いものだから。

 聖カピトーリナ修道院
 モンク―神罰の地上代行者―を目指す若き聖職者たちが集う地の門を前に、私は異質な空気を感じていた。
 私は今まであまり人とかかわったことがない、そのためユカリさんのような人が聖職者としての普通と認識していた。しかしここにはその様な感覚はない。
 あるのは研ぎ澄まされた刃のような鋭さ、あるいは丹念に打ち鍛えられた鋼鉄のような硬さと言うべきか。街角ですれ違うモンクとは明らかに違う気配にたたらをふむ私を横目にユカリさんが門に手をかける。
 わずかに軋みをあげながら門は人が一人通れる程度にその身を開いた。
「若き聖職者よ、この修道院にどのような御用かな?」
 不意に横から声をかけられて、私はとっさに飛び退ってしまった。それをあからさまな警戒ととったのか声の主はわずかに逡巡してから、自らの気配をより絞り込むように抑えた。
 私が警戒した理由、それは野生の獣が獲物を襲う前に似たような殺意を感じたからだ。ハンターの体はとかく殺気や気配といったものに鋭い。
 しかしその殺気はユカリさんが杖を勢いよく振り払うだけで霧散して消えた。
「まだまだ気の練り方が甘いわよ、クライン」
 ユカリさんがひゅんひゅんと杖を振り回しながら門の横の木の陰に立っていた修道僧服を着た男に向かって言い放つ。男は一瞬面食らってからあわてて走りよってきた。
「ゆ、ユカリ様!? これはとんだ失礼をっ!」
「気にしなくていいわよ、急な来訪になったしね。あの程度の気当たりなら何度も経験してるしたいしたものじゃないわ」
 二人のやり取りを見ながら私はこの二人がどのような間柄だったのか少しだけ考えて、その予想の付かなさから思考を放り投げた。
 お互い聖職者である以上何かしらのつながりはあるのだろうが、いわゆる一般的な聖職者と修道僧の間柄ではない気がする。
「フィネ、紹介するわ。聖カピトーリナ修道院、修道院長補佐、クライン・エルベネーゼ。まだ未熟なところもあるけど将来有望な修道僧よ」
「やれやれ、相変わらず手厳しいな・・・とはいえまだ一本も取れていないのだから言われても仕方がないか、クラインだ。よろしく、イグドラシルの継承者マスターの・・・ええと」
 彼は私のことを呼ぼうとして名前をまだ聞いていないのに気づいてユカリのほうに視線を送った。それを読み取ったのかユカリさんはそのまま紹介を続ける。
「フィネよ、フィネ・デュセンバーグ。まだ一緒に戦ったことはないから実力は不明だけど、まぁ素材がいいから問題ないでしょう。あと数年はあると見てるしね」
「フィネか、よろしく頼む。出来れば手合わせを、と言いたいところだが弓使いと手合わせをするのも少々難だな。さて、立ち話もなんだし中に入ってくれ。院長はあいにく出かけているのでたいしたもてなしは出来ないが」
 ギルドマスターとしての権限を継承したばかりだというのに一目置かれるような扱いに正直戸惑いを隠せない。果たして私にその資格があるのかと考え込んでしまう。
「ほら、フィネ。いくよ」
 ユカリさんに声をかけられて私はようやく二人から大きく遅れていることに気づいた。
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