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イグドラシルの継承者~大樹編プロローグ3~

2008-10-29 Wed 00:46
 ユカリさんの目的として連れてこられたのは首都プロンテラだった。もともと私はあまり首都までは買い物に出かけなかったので来るのは数年ぶりという始末だ。
 とはいえ印象的にはあまり変わっていない。人が多く、露店が多く立ち並び熱気にあふれた、まさしく首都といえる街だった。
「急ぐ用事でもないし、露店見るの好きよね? のんびり見て回りましょうか」
 というユカリさんの申し出をありがたく受けて、二人で露店を見て回る。不思議なことに、一緒に行動するようになってから一週間、ユカリさんは私の好みをことごとく言い当てていた。食べ物の好みから服装の趣味、果ては私が他人に言わないようなことまで。
 その事実が、やはり私がユカリさんと過去に友人か、あるいはもっと親しい仲であったことの証拠に思えた。しかし不思議なことに、私は物心がついてからの今に至るまでの記憶に目立った喪失を実感していない。そんなことがありえるのだろうかと不思議に思う。
 最悪ストーカーの類という可能性もありえたが、その可能性を疑うには彼女はあまりにも私と純粋に楽しそうに接する。疑う気にはなれなかった。
 噴水広場の付近にもやはり露店が多く立ち並んでいた。その露店の一つにかねてからほしかったものを見つけてはたと私の足が止まった。
 値段は8に続いてゼロが5個、800kZenyだった。あいにくと私にそんな余裕はなく、いつも眺めるだけなのだが、いつか手に入れたいなと思っているのだ。
 ルナティックの毛をふんだんに使った、うさぎのヘアバンドは人前でつけるには少々恥ずかしいがかわいらしさは飛び切りだ。そんなことを考えながら見ているとユカリさんが隣で同じものに視線を向けた。
 自分の隠れた可愛いもの好きという収集癖に気づかれたかな、と少々あせったが、おそらくそれも彼女は知っているのだろう。どうしたものかな、と思っているとユカリさんはそれを手に取ると商人となにやら話し始めた。
 商人がなにやら驚きながらユカリさんから小さな証書を受け取るとそれの検分を始める。それがなんなのか私からは良く見えなかったが、ややあって商人が証書の確認を終えるや、100k金貨を二枚ユカリさんに差し出してきた。袋に入れるかときかれたがそれを断ると私にそのうさぎのヘアバンドを手渡してきたのだ。
「ほしかったんでしょ? 再会を祝してのプレゼントってことで、ね?」
 断ろうかしばし迷ったが、おそらく断っても彼女は納得しないだろう。ありがとう、とお礼を言って、少し恥ずかしかったがそれを頭につけてみた。
 以前にもこんな気持ちを味わったことがある気がするが、よく思い出せなかった。ただ、心地よい懐かしさがあった。
 どうやらユカリさんが先ほど商人に渡したものは、とあるギルドが発行する小切手だったらしい。つまり、ユカリさんはその大手ギルドの一員か―通貨としての信用度があるほどの小切手を発行できるのはよほどの大手ギルドか、さもなくば国の認定を受けた特殊なものに限定される―国の直営ギルドに在籍していることになる。
 初めて出会ったときに―といっていいのか分らないが―プリーストとしてはあるまじき近接戦闘能力を見たときから気になっていた疑問が一部解決した。それだけのギルドに所属しているというのならその実力も頷ける。
 今は露店を見るのもやめ、ユカリさんの先導のままに歩いていたが、その歩がどうやらプロンテラ王城に向かっていることに気づいて少々戸惑う。
 いったい、ここにどのような用事があるのだろうか。
 城門前で近衛兵に対して話をつけるとそのまま謁見の間まで案内された。あまりのことに慌てふためく私を座らせて、ユカリさんは私の向かい側に腰を下ろした。
「・・・フィネ、こんなぎりぎりまで話さなかったのは卑怯だと思う。落ち着いて聞いてね」
 ユカリさんはそのまま長い話しに入った。
 世界のどこかに存在する、イグドラシルの話。
 そして、そのイグドラシルに千年前にかけられた封印が解けかかっているということ。
 そのイグドラシルをめぐって、魔物と人間の間に、数年以内に大きな争いが起こるということ。
 そして、私がその戦いの指揮を執る、ギルド―イグドラシルの継承者―のギルドマスターの転生した姿であること。
 にわかには信じられない話を、ユカリさんは千年前からの運命だと告げて話を締めくくった。
「そんな話・・・信じられるわけが・・・」
「でも、事実なの」
 彼女の瞳は嘘をついては居ない。それは直感的に確信できる。さらに、彼女は私には決して嘘をつかないということも。それでも、その話は信じがたいものだったのだ。
 確かにここ数年、頻発する地震や異常気象が気になってはいた。
 しかしそれが、人間と魔物の間で起こるであろう戦争の予兆であるなど、誰が信じるだろうか。
 いや、そうだとしても。
 私に、ギルドマスターなどというものが勤まるとはとても思えなかった。
 今、この話を聞いただけでも手が震えている。眼前に迫ったあまりに巨大な運命に、足はすくんでいる。立てるわけが無い。
 おそらく今私の顔は蒼白としているだろう。視界は暗くなり、自分がそんな運命を背負えるわけが無いと怯え、さぞかし惨めな姿を晒しているのではないかと思う。
 そんな私を、突然誰かの腕が包んだ。いや、この場には二人しかいなかったのだから、間違いなくユカリさんだろう。何時だったか、同じようなことを経験した気がする。
 出てくる言葉はきっと――
「フィネ、自信を持って。貴女なら大丈夫、必ずやり遂げられる。そして今度こそ――」
 言葉を続けずに、唯強く抱きしめられた。そこにいったいどんな言葉が続くはずだったのか私には分らない。けれど、その言葉は言葉として表されないままに伝わってきた気がする。
 一週間前に出会ったとしか思えないこの女性を信じていいのかとしばし悩む。理性的に考えるならば、信用すること自体が有り得ない話だろう。
 けれど今は、この答えも分らない湧き上がる感情に従うべきだと感じていた。
「・・・自信はないし、期待にそえるか分りませんよ?」
「うん、わかってる」
 背中に感じる体温に包まれながら、まだ迷いこそあったけれどやれることをしよう。私はそう決めた。
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