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イグドラシルノ継承者~大樹編 プロローグ2~

2008-10-16 Thu 00:43
 部屋の明かりをつけたとたん、彼女の反応がなくなったのを不思議に思いながらとりあえず装備を置く事にした。使い込まれたハンターボウと、愛用の矢筒を部屋の隅に置く。
 マレーネの食事を奥の棚から取り出して与えていると、ようやく彼女が動いた。
「ねぇ、その十字架・・・どこで手に入れたの?」
「ん? あぁ、これ? 親からもらったのよ。冗談みたいな話だけど生まれたときに手に握ってたらしいわ。いまどきどこの聖女伝説だって話しよねぇ」
 事実私はそれを信じていなかった。ただ、親から受け継いだ大事なお守りだったから今まで肌身離さず持っていたに過ぎない。不思議なことに、十字架の裏側には文字が刻まれていた。
「・・・もしかして、その十字架の裏側に・・・文字が刻んであったりしない?」
「うぇ、なんで分ったの? やっぱりそういうお守りって裏に何か刻むのが一般的なわけ? 私もよく分らないんだけど、書いてあるんだよねぇ、ずいぶん古い文字らしいんだけど。片方はうちの家系のご先祖さまかもしれないんだけどね」
「・・・あてて、あげようか?」
 今にも泣きそうな顔をしながら、彼女はそう告げてくる。流石にただならぬ気配を感じて私はちょっとだけ警戒した。
「ユリア・シャープムーンよりリーシア・デュセンバーグへ、祈りと加護と、愛を込めて」
 彼女の台詞に私は心底驚いた。それこそ喉から心臓が出てしまうのではないかというほどに。私の持つ十字架の裏に刻まれているのは一字一句たがわずまさしく彼女の言葉どおりだ。
 私にはユリアという人物は心当たりはないし、デュセンバーグ家にも過去にリーシアという名前の人がいたという記録は残っていない。紛失しているだけかもしれないが、少なくとももう確認は出来まい。
 そんなことを考えていると突然まだ名前も知らない聖職者の女性は私に抱きついてきた。突然のことにそのまま倒れてしまった。起き上がろうとしてそこでようやく目の前の聖職者が泣いているのだと気づいた。どういう理由なのかはわからない、夜の森の恐怖が今になって出たのかとも思ったが、どうも違う様子だった。
 どうすることも出来ずにそのまましばらく過ごしたが、狩りの疲れからかそのまま寝てしまっていた。
 翌朝になり目を覚ましたとき、まだ彼女がくっついていて流石に困った私は彼女をそっと引き離すと、着替えることにした。服が汗と違うものでぐしょぐしょになっていたところから、彼女にどれだけの衝撃があったのかを改めて実感する。
 彼女はこの十字架の由来を知っている。私はそれが気になった。
 朝食の準備を終えたところで彼女が目を覚ましたのを見て、シチューを差し出すと少し遠慮がちに受け取った。昨夜の引け目でもあるのだろうが、私が気にしていないことを告げると小さく笑った。
「とりあえず、自己紹介をしましょうか。私はフィネ、フィネ・デュセンバーグ。見てのとおりハンターよ」
「私は・・・ユカリ、ユカリ・ハーフムーン。プリーストです」
「ユカリさんか。ねぇ、ユカリさんはこの十字架の由来知ってるの?」
 自己紹介を短く済ませ、私はこの十字架の由来について聞いた。彼女は小さく知っていると答えたが、どういえばいいのか分らないといって答えてくれなかった。
 私としては少々不服だったが、おそらく彼女としては言いづらい理由があるのだろう。私はしばしどうするか悩んだ。
 名前からしておそらく、彼女の知人か友人、あるいは先祖の誰かが私の家系の先祖に送ったものなのだと思う。それにしては大して年季の入っていないその十字架を見つめる。
 まるで時代を超えて現れたような、そんな印象すら受ける。だとしたら目の前の女性は何者なのだろうか。
 シチューを食べ終えたユカリが、一味入れ忘れてない? と言って来て、私はそこで始めて調味料を一つ入れ忘れたのを思い出した。
 その後に続く、相変わらずね。という一言に、私は強烈な幻視に襲われた。過去なのか、未来なのか分らないが目の前にいるプリーストの女性の服に、豪奢なピンク色の高位司祭服が重なって見えたのだ。幻視の中で見た彼女は、幸せそうに微笑んでいた。

「ご馳走様、だいぶ上手になったわね、リーシア」
「まだまだ、ユリアには届かないけどね」
「そうね、またスパイス一つ入れ忘れたでしょう?」
「ぇ、ウソ?」
 リーシアがあわてて台所にいくと、用意したスパイスが一つだけ入れ忘れられて放置されていた。
「リーシアはどうしていつもナツメグだけ入れ忘れるの?」
「わかんない、なんでだろう」
 かれこれリーシアがシチューにナツメグを入れ忘れるのは今日で七回目だった。
 二人してしばし見詰め合い、そしてお互いに笑った。

「・・・ええと、ごめんなさい。ユカリさん、もしかして私は貴女に会った事があるのかしら?」
 一瞬だけ切なそうな、苦しそうな表情を見せて、それから彼女は少々ぎこちなく笑って見せた。
「・・・えぇ、あるわよ。遠い・・・遠い昔にだけれど」
「そっか・・・ごめんね、忘れちゃってて」
 きれいな蒼味がかった銀色の髪と、サファイアのような蒼い瞳。一度見たら忘れることなどないと思うのだが、私はどうやら間違いなく彼女のことを忘れてしまっていたらしい。彼女がいいのよ、そのうち思い出してもらうから。と告げた言葉に強い希望が混ざっていたのを私は直感した。
 しかし気になることが一つあった。彼女が遠い昔といったとき、それは十年や二十年という感慨をはるかに超えた空気を持っていたように感じたのだ。
 不思議な感慨を抱かせた聖職者の女性のことを、私はもっと知りたいと思った。しばらく前から村を出ようかと思っていた私は、旅を続けているのなら一緒に行っても良いかと聞いた。
 会ってまだ一日しかたっていない相手になにを聞いているのかと自分でもあきれてしまったが、彼女は快く承諾した。
 何でも、私を探すのが第一の目的だったらしい。そこまで私のことを探す人がいるというのがにわかには信じられなかったが、彼女の言葉には嘘がないと感じた。
 何でも彼女には目的があるらしく、私を連れて行きたい場所があるという。どうせ私には目的が無いのだから、彼女について気ままに旅をするのも悪くないとそれに同意した。
 この選択が後の運命を大きく変えてしまうことを、今の私は考えもしなかった。
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