主に小説の更新を中心に、日々の事やゲームの事を綴っています。
スポンサーサイト

-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑

イグドラシルの継承者~大樹編 プロローグ~

2008-10-11 Sat 09:28
 千年の平和――
 それは、人々から戦いの記憶を忘れさせた。
 古の時代に存在し、滅びた国―グラストヘイム―その過去すらも、文献としてしか残ることはなく、長い歴史の中に埋もれ忘れ去られた。
 長く平穏な時代、人々は新たな文明を発達させ続けた。それが、過去に大戦を経験した人々が望んだものだと知らずに。
 世界のどこかに存在するという生命樹―イグドラシル―
 それを守るために起きた人魔大戦のことを・・・識る人はすでにわずかしか残されていなかった。
 そして、次の大戦が近づいていることを――人々はまだ、知らない。
 フェイヨンの森の中を気配を殺しながら歩く。思いのほか遅くなってしまったことを後悔しつつ空を確認しながら村への道を進んでいく。そこに迷いは無い。
 かれこれ十数年歩きなれた道だからこそ、暗くなってすら迷わずに歩けるのだ。
 相棒である鷹のマレーネは肩の上に乗っている。正直な話重いのだがそこはいつものことと我慢する。
 古傷の所為で私の左腕は満足に動かない。それでもハンターとして生業を維持していけるのはひとえにこの相棒のおかげなのだから、多少のわがままは聞いてやらねばならない。
 そんなことを考えながら、もうすぐ弓手たちの暮らす村、フェイヨンにたどり着くころだと思った矢先、獣のうなり声が耳に届いた。太く重いうなり声には聞き覚えがあった。ウルフたちを束ねる長、さすらい狼。
 しかし今のうなり声は私を対象としたものではないことは確実だ。声はもっと遠くから風に乗って届いた。あいにくと人間では聞き分けることも方角も分るまい。
「マレーネ! 一仕事お願い」
 言うよりも早くマレーネは私の肩から飛び立っていた。そのまま木々の上空まで舞い上がると数回頭上を旋回し、私の元に滑空してくるかとおもえば木々の合間を縫って飛翔を開始した。私はそれを即座に追いかける。
 おそらく襲われている誰かはすでにウルフたちに囲まれているはずだ。それがどの程度の使い手かしらないが、この暗くなった森の中では野生の動物たちと相対するには確実に不利なはずだ。
 やがて焚き火の明かりが見えて、襲われているのはその焚き火の主だと直感した。すでに何匹もの狼が襲い掛かっているが、次々と叩き落とされているあたり相応の実力を持っているのだと知れた。
「Blitz・・・Beat!!」
 それでもこの暗い中で魔物の集団相手に戦うには無理があると判断した私は声をかける間もなく飛び出していた。驚いたことに、焚き火の主は黒い僧衣を纏った若い女プリーストだった。ロングメイスを片手に襲い掛かるウルフを次々と叩き落しているその姿に疲れといったものは見えない。
 余計な援護だったかな、と思うが今はそれどころではなかった。雑多なウルフであればそれほどではないが、さすらい狼は別格だ。プリーストの女性を庇うように前にでて私は弓に矢を番えた。
「下がって! さすらい狼は強敵よ!」
 気づけばあらかたのウルフは殲滅されていたが、まだ本命ともいえるさすらい狼は傷一つ負っていない。こちらが疲れるのを待っていたのだろう。ここ数年、魔物の知恵は徐々に高くなっているように感じた。
「左腕に怪我してる?」
 唐突にかけられた声に私は戸惑った。すでに古傷のみで上手く動かないというだけのそれをどうして気づいたのだろうか。と戸惑っていると、突然襟首を掴まれて後ろに引き倒された。
「まぁ、任せておきなさい」
 そう言って彼女は私の前に悠然と立ち、さすらい狼が動くのを待った。
 しばらくは襲い掛かるか迷っていたさすらい狼だが、これ以上待っても無駄と判断したのか疾走を始める。彼我の距離は二十メートルほど。それを一瞬で詰めたさすらい狼は彼女の首筋に牙をつきたてようと巨大な口を広げて飛び掛る。
 それを叩き落したのは一瞬の閃光ともいえる一撃だった。杖のように持っていたロングメイスが閃光のように閃き、さすらい狼を上空へと打ち上げた。
 無様な悲鳴を上げてさすらい狼が上空から落ちてくるところへ更なる追撃が入る。
 鈍い音が、さすらい狼の命をたやすく奪ったのを私は確信した。
 ドザッ
 という音と共に、十メートルほど離れた場所にさすらい狼が墜落するのと彼女が構えを解くのは同時だった。
「まぁ、こんなところかしらね。大丈夫? 怪我はない?」
「あ、うん。大丈夫・・・助けに来ることも無かったかしら?」
「そんなことは無いわ、気持ちはうれしかったわよ」
 気持ちだけ・・・まぁ、今の圧倒的な戦闘能力を見せられてしまってはいっそはっきり言われたほうが気が楽だ。そんなことよりも――
「こんなところで野営? すぐそこにフェイヨンの村があるのに」
「ぇ、そうなの?」
 どうやら村の位置を知らない旅人だったらしい。もしかしたら巡礼の旅の途中なのかもとおもいながら、しばし逡巡する。迷惑だろうかと考えつつ、村まで案内するならとも思う。
「私はこれからフェイヨンに帰るつもりだったんだけど、よければ一緒に行きます?」
「それは願っても無い申し出だわ、ぜひご一緒させてもらっていいかしら?」
 焚き火に照らされて暗い森に浮かび上がる彼女の笑顔に、なぜか不思議な懐かしさを覚えながら私はフェイヨンまでの道を案内することになった。

 思わぬところで道に迷ったがずいぶんとフェイヨンの近くまで来ていたらしく、まだ名前も聞いていない彼女は森の中を軽快に歩いていく。
 正直着いていくのが少々つらいのだが、何とか引き離されない程度には追っていけた。半刻とたたず村の敷地内に入ったのを見て、本当にすぐそばまで来ていたのだなと思う。我ながら、地理に疎いのは変わらないらしい。
 宿屋がどこかとたずねたら思わぬことに、よければ家にくる? と誘われたので言葉に甘えることにした。
 村はずれの小さな小屋が彼女の家らしく、部屋に入ると小さな明かりが灯った。
 簡素な魔法技術によって実用された据え置き型の明かりはさまざまなところで用いられている。昼間と変わらぬ明かりが部屋を満たしてから私は彼女に向きかえり、そして心臓が止まった。
 いや、そう表現する以外になかった。
 あまりにも似ていたのだ。リーシアに。
 髪の色と長さこそ違えど纏う雰囲気はリーシアを思い出させる。澄んだ金色の瞳。顔立ちから体型まで、なにから何まで似すぎていた。左腕が不自由というところまで・・・。
 極めつけに、彼女の胸に見覚えのある十字架がゆれていた。
スポンサーサイト
別窓 | たわいもないにっき | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑

<<偶の散歩 | 蒼月雪歌の活動録 | 部隊結成しました!>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL


FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 蒼月雪歌の活動録 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。