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歌雪の手記 最終話~過去と現在、そして望む未来~

2008-09-28 Sun 22:45
『私は、もう貴女みたいな子が出ないような国を作りたい。世界のすべてを変えようなんて思わない、ほんの少し、みんなが幸せになれる世界になればそれでいいわ』
 そう、レイリアは私のような境遇の子供が居ることを知って、そんな世界のあり方はダメだと言って、世界のあり方を変えるために戦うことを決めたのだ。

 あの時のレイリアの気持ちを、意志を私は忘れていた。
「別にレイリアの遺志を継ごうとか、そんな大それたことを思ってるわけじゃない。ただ、レイリアが見ていた世界の先になにがあるのか、見てみたいと思っただけ」
 私の告げた言葉を聞いてクルトは苦笑した。そういうのを遺志を継ぐっていうんだよ、なんてことまで言う始末だ。
 あいにく私にそんな権利もなければ、するだけの資格もないだろう。
 けど、私たちの願いは同じだったから。
「まぁ、覚悟が決まったのならそれでいいさ。信じる生き方をするなら、俺は文句はねぇよ。また、よろしく頼むぜ?」
「ええ、まずは準備からだけどね、カンも鈍ってるだろうしね」
そんなことを言いながら、私は心からの12年ぶりの笑顔を見せることが出来た。

 二月がたち、腕の傷がほぼ完治したのを機に、私はある報告をしに来ていた。
 カセドリアの小高い丘にある小さな墓石。
 Leyria springs とだけ綴られている。
 墓石の横に腰を下ろして、私は取り留めのない話をしていた。今までのこと、思い出話、そしてこれからのことを。
 それは報告と言うよりは、自己満足の独り言に近かったかもしれない。それを言うなら墓参りと言うもの自体が生者の自己満足に過ぎないのかもしれないが。
「ずいぶん時間がかかったけどさ、もう一度歩いてみようと思うの。貴女が目指した道の先を探しに・・・貴女は、許してくれる?」
 返事はあるわけもない。
 だから、これは儀式だ。
 過去を過去として認め、未来に進むために私がしなければならない、縛られた過去を解き放つための。
 思わぬ協力もあり、12年と言うブランクをわずか2ヶ月で埋めた私は、来週にはもう戦場に戻る。だから、当分来られなくなるだろう。
 その意味でもこの訪問は大事なものだった。
「居た居た、探したぞ歌雪」
「あら、クルト。どうしたの?」
 クルトはなにやら大きな包みを持っていた。それがなんなのか直感的に悟る。
 弓だ。それも、かなりの品なのだろう。いれてある袋からして上等なものだ。
「お前まだ弓決めてなかっただろ? どうせどっちも扱えるんだから持っておいて損はない、これならお前も納得がいく品だと思うんだがどうだ?」
 袋を渡されて、取り出す。見覚えのある品だった。そう、これは――
「レイリアの使っていた・・・弓?」
「そうだ。お前がもう一度前線に立つっていうなら、これ以上のものはないだろ?」
 念入りに手入れされていたのだろう。12年と言う年月を感じさせない品だった。
 これはきっと運命なのだ。12年のときを経て、私はレイリアと再会した。
 また、一緒に戦おう。
 
 カセドリアに作られた精鋭部隊がその戦果をメルファリアに轟かせるのはまだ先の話。


「歌雪さーん!」
 丘の下から声が聞こえた。花束を持って、短剣使いの女性が駆け寄ってくる。
「ずいぶん探しましたよ?」
 歩きつかれたのか杖に体重をかけながら、魔法使いの男性が丘を登ってくる。
「静かでいい所だ」
 伸びをしながらのんびりと景色を楽しみ、短剣使いの男性が歩み寄ってくる。
「挨拶は済んだのか?」
 こういう場所は苦手だとばかりの態度で、重斧使いの男性が傍に腰を下ろす。
 そうだ、報告がまだ残っていた。
 素敵な仲間に出会えたことを、私はまだ伝えていない。
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