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歌雪の手記 九話~壊れた少女~

2008-09-26 Fri 00:37
「無理も無いだろうな、当時いくら大人に混じって戦場を駆け抜けていたとはいえ、あいつは見た目相応の、12歳の女の子だったんだ」
 そうして到った結果は、延々と自らを責めたてることだった。
「あいにくと俺はバカでな・・・その場であいつを助ける方法が一つしか浮かばなかったんだ」

「ふざけるなよ、死んで済むとでも思ってるのか!お前が死んでレイリアが戻ってくるならいくらでも殺してやる!だがそんなことをしたってあいつは帰ってこないんだよ!お前に出来る償いはな、罪を背負って生きることだ、苦しんで苦しんで、それでも生き続けろ!死に逃げるなんて俺が許さん!」

「多分、罰を与えてほしかったんだろうな。俺がそう一喝して、数日であいつは戻ってきた。以前のようにとは、いかなかったがな」
 何度と無く自虐を繰り返し、左手の手首には常に包帯が巻かれ、ただ自らを罰し続ける少女。そのむごさを思い出して、クルトは頭を抱えた。
「俺のやり方は、きっと間違っていたんだろうな。あいつを守るどころか、傷つけてばかりで・・・」
 まるで懺悔のような彼のつぶやきは、カフェテラスを吹き抜ける風にさらわれて消えていった。
「まだ・・・彼女は背負い続けているんですか?」
「あいつは・・・最後に歌雪あてに言葉を残してた。それを・・・俺はいまだに伝えられずに居るんだ。伝えたら・・・また壊れてしまいそうで、な」
 誰もが沈黙した。言い表せない嫌な空気、その空気を振り払ったのはユアリスだった。
「伝えましょうよ」
 小さく手が震えているのは、怒りからか悲しみからか、ともかく彼女はクルトに向かって告げた。
「もう12年、なんですよね? 歌雪さんなら、大丈夫ですよ・・・きっと。伝えてあげるべきです、だって・・・そうでないと、悲しいじゃないですか」
 しばらくの沈黙を置いて、クルトは小さくそうだな、とつぶやいた。

 どう伝えればいいのか、など考えも付かない。
 どう伝えようと、受け止めるのは自分ではないのだから。だからせめて、フォローぐらいはしてやろうとおもった。それが、意味を成さなかったと知ったのはそのあとだったが。

「・・・じゃあ、私の今までの12年は・・・なんだったの?」
 話を終えてから、歌雪はそうつぶやいてた。
 その目に生気はない。
 たとえて言うなら今まで自虐を繰り返して生きてきた12年を、完全に無駄だと否定された幼い少女のように、生まれてきたことを否定された小さな子供のように、小さく震えていた。
 クルトは何もいえなかった、ほかの四人も黙ったままだ。
 歌雪は玄関を指差して、出て行ってとかすれた声で告げた。
 その有様はとても見ていられるものではなかった。放っておくには危なげすぎた、だがかといってかける言葉も見つからなかった五人はそのまま歌雪の家をあとにするしかなかった。

 何かを忘れている気がする。
 当時の・・・12年前の頃の記憶はなぜかひどく曖昧で、その理由がなんなのか私は漠然と考えていた。
 逃避・・・なのだろうか。
 当時のことを思い出すだけで、レイリアを死なせてしまったことを思い出す。その記憶を封印するために私の本能が取った防御策なのだろうか・・・。
 だというのなら私ごと過去が消えてしまえばいいのに。
 私は街を幽鬼のようにさまよっていた。自宅というのはそれだけで、たとえどれだけ環境が整っていなくても安心できる場所となる。そこに居る権利が、私にはないように思えて私は自分の部屋から逃げ出したのだ。
 夕闇に沈む街はひどく曖昧で、まるで過去と現在の隙間に存在する幻想のようだった。
 不意に、視線に気づいた。
 12年というブランクを経ても、いまだに人の視線には敏感なのだと自覚する。
 視線の正体は小さな少年だった。ふと気づいて周囲を見ると、そこはスラム街といってもいいほどに荒れた地区だった。嫌な記憶がよみがえるのを私は自覚していた。
 あぁ、きっと聞くに堪えない嫌なことを言われるんだろう。
「おねぇちゃん、ぼくをかってくれない?」
 脳の奥に、鈍痛が走った。

 結局のところ私は持っているお金で買えるだけの食糧を買い込んでそのスラム街の一角を陣取っていた。子供は思いのほか多い。皆戦火によって身寄りをなくした子供たちなのだろう。
 この国はいまだに病んでいるのだ。終わらない戦火と、それによって傷つく民という、二つの病によって。
 独立してもいまだに癒えない病、一体この国を導いている連中はなにをしているのか・・・。
 軍に所属している身としては、なぜそうなるのかを知っていてもそう思わずには居られない。その理由はカセドリアが連合王国というメルファリア唯一の特殊な形態を取っているからに他ならない。
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