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歌雪の手記 八話 ~十二年目の真相 もう一つの真実~

2008-09-17 Wed 00:20
 少し疲れたわ、もう帰って。
 歌雪にそういって追い出された四人は彼女の家の前で互いに顔を見合わせていた。
「・・・少々、予想外でしたね」
「ああ、只者じゃないとは思っていたが・・・」
 一人だと思っていた凄腕のスカウトは、実は二人組みで、一人はすでに他界して、一人はすでに戦えない。おそらく彼女は十二年前から、止まってしまっているのだ。

「さて、どうする。ユア」
「ん・・・どう、すればいいのかな。わかんないや」
 戸惑っているのかわかったのか彼は何も言わないままに目をそむけた。
「お前ら、そこの家に何か用なのか?」
 唐突に声をかけられて四人がそろって振り返る。声の先に居たのは三十代半ばと思われる一人のウォリアーだった。
「あ、いえ。今歌雪さんのところで用が済んだところでして、ちょっと相談してたんですが・・・」
「歌雪・・・あいつ、今でもその名前を名乗ってるのか」
 あきれた様に、でも懐かしそうに男は少しだけ遠い目をする。それが歌雪の過去を知るものがする表情だと、ユアリスは気づいてしまった。
「あの、失礼ですが・・・貴方は?」
「俺はクルト、あいつの・・・まぁ、旧友だな」
 つい先ほど出てきた名前に四人は顔を見合わせた。

「そうか・・・あいつはまだ」
 場所は小さなカフェ。コーヒーがおいしいと傭兵仲間で人気のあるところだった。クルトを含めた五人は場所をそこに移していた。
「なにを聞きたいんだ?」
 クルトのその発言に四人は顔を見合わせる。なにを聞くべきなのか逡巡しつつ、聞くべきことを考える。
 なにを聞くべきなのだろうか。いや、聞いてはいけないのではないかとさえ思ってしまう。聞きたいことは山ほどあるはずなのに、いざとなると出てこないから不思議だ。
「十二年前のことについて・・・お聞きしてもいいですか?」
「そんな話、・・・歌雪からすでに聞いてるだろう?」
「貴方の視点からで結構です、お聞かせ願えませんか?」
 という紳士の発言に、クルトは小さく舌打ちした。
「お前、カンが鋭いってよく言われるだろ? まぁいいけどな」
 視点が違えば見方も違ってくる、違う真実が見えてくることもある。真実が一つというのはていのいい戯言だ。真実など見方によっていくらでも姿を変える影絵に過ぎない。
「レイリアが歌雪をかばったところと、それを見て俺が歌雪を殴り飛ばしたところまでは同じだ。今思うと我ながらなにを考えてたのかと思うがな・・・その所為で、レイリアの最後の言葉を歌雪に聞かせてやれなかったのは・・・俺の人生最大の失敗だろうな」
 生きていたのだ。
 歌雪を庇い致命傷を負ったレイリアは、クルトがきたときにまだ息があった。歌雪の知らなかった彼女の最後の言葉。
「まず、叱られた。歌雪は悪くない、ってな。次に、あの子をお願い、守ってあげて。って頼まれた。最後に、先に逝ってごめんね、って謝られたよ」
 おそらく、それが精一杯だったのだろう。死に行くものが残すにしては多かったかもしれない。
「あいつは常に歌雪のことを気にしてた、境遇の所為もあっただろうが、妹というより自分の娘としてみてたんだろうな。いつだったか、三人で休暇を過ごしたときにはな、『これは来るべき日のための予行演習ね』なんて言ってたぐらいだからな」
 それがなにを意味するのか、みなまで言われなくてもわかる。仮初だったかもしれない、けれどそれは紛れもなく大切な日々だったのだろう。
「笑顔で死んでったよ。守りたいヤツを守りきって、満足してたヤツの顔だ。問題はその後だった」
 この先はおそらく歌雪の口から語られなかった部分だ。
「終戦して、あいつは軍の医療施設に収容された。俺が落ち着きを取り戻すまでに三日ほど、落ち着いてから会いに行ったあいつはひどい有様だったよ」

「やれやれ、やっと来たかね」
 軍医は厄介ごとのタネが来たとばかりに顔をしかめると、軍病院の中を先導する。導かれるままに続くクルトに、さっさと何とかしろといわんばかりだった。
「刃物は持ち込むな。自殺されると面倒だ。動けないように縛ってあるから大丈夫だとは思うが相手は刃物の扱いには手馴れたスカウトだからな」
 その意味がわからなかった。
 その言葉が理解できたのは、スノウの病室に入ってからだった。
「ごめんなさい」
 最初に聞こえてきたのはそんなつぶやきだった。
「後は任せた」
 そういって軍医は部屋には入ってこなかった。ドアが閉められ、部屋に二人きりになる。まだ十二歳の幼い少女はベッドの上に縛り付けられていた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 まるで呪詛のように続くその言葉に、背筋が冷たくなる。気配に気づいたのだろう、歌雪はドアのほうに首だけを傾けて、言った。
「・・・だれ?」
「俺だよ、クルトだ。わかるか?」
「クル・・・ト・・・?」
 名前を理解するのと同時、彼女は泣き始めた。
「ごめんなさいごめんなさい・・・殺して・・・ごめんなさい・・・レイリア・・・ごめんなさい・・・殺して・・・ごめんなさい・・・」
 その様を見て、なにがあったのかを理解した。
 彼女の心は、耐え切れなかった。レイリアの死を受け止めることが出来なかった。そして何より、その原因を作ってしまった自分を許すことが出来なかったのだ。
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