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歌雪の手記六話~探す者と探される者~

2008-09-12 Fri 01:46
 自室に戻って、ようやく私はため息を吐き出す。
『今すぐに答えは出ないでしょうから、一月の間考える猶予を差し上げます』
 男がそういって、話は終わった。
 過去の記憶を思い出し、私はベッドに倒れこむ。
 忘れてはいけない、忘れられるわけがない記憶。
 私は緩やかに深い眠りの底に沈んでいった。

 ドンドンとドアを叩く音で目が覚めた。
 ベッドから起き上がり、寝ぼけた頭で玄関へと歩いていく。
 途中、机の上にある写真立てに目が行った。
 12歳の私と、その隣に立つ20代中ごろの女性。
 一瞬止まった思考はドアを叩く音にかき消された。
「はいはい、どちらさまー?」
 ドアを開けてみればそこには見知った顔が四つ並んでいた。
「どうも、先日ぶりです」
「あらまぁ・・・どうしたの?」
「少し・・・聞きたいことがありまして」
「・・・ふむ、まぁ立ち話もなんだしね、狭いところだけどあがって」
 四人を部屋に上げ、狭い客間に通すとお茶の準備をする。そうして話す準備が整ったところで意外な話題を振られた。
「歌雪さん、カセドリア連合王国が新しい部隊を立ち上げるという話、ご存知ですか?」
「んー、戦果の高い者を集めて精鋭部隊を作るとかいう噂のこと?」
「さすが、情報が早いですね」
「まぁ、職業柄ね・・・根も葉もない噂まで入り混じって入ってくるわ」
 困ったものよ、と作り笑いをして、嘘を隠す。
常識的に考えてメルファリア唯一の新聞社であろうと、そんな国の機密事項入ってくるわけがない。軍機密というのは特に厳重に扱われる。噂であれ一般市民に出回るような類の話ではない。
しかし、だからこそ噂というのは侮れない。そのためそういった情報は噂という表現を使う。噂というのは民の不安であり、噂というのは考えうる最悪の可能性であり、それゆえにその対策を考える人間は間違いなく存在するからだ。
「メルファリア新聞社の記者であれば、各国の王相手にすら取材を受けてもらえる、という話もありますしね」
「それは事実よ。むしろ向こう側から連絡を取ってくることもあるらしいわ、私は生憎とそういう機会に恵まれたことはないけどね」
 これは事実だ。自国の正当性を広めるという目的で、メルファリア唯一である新聞社には比較的頻繁に思想についてなどのコラム記事の掲載を依頼されることが多い。
「そしてあなたはカセドリア所属、つまり・・・この国の記者であり、この国で最も情報に詳しい人の一人のはずです」
「まぁ、国全体で見ればそうなるかな?」
「歌雪さん、貴女は本当は・・・レイリア・スノウという人の行方を知っているのではないですか?」
 とんだ不意打ちだった。まさかいきなりそこ踏み込んでくるとは思わなかった。
 しかし、意図が読めない。
「えらくまた・・・脈絡のない話ねぇ」
「そうですかね?」
「えぇ、どうしてそういう結論に至ったのか教えてほしいわね」
 彼、yunomiは少しだけ考えるそぶりを見せてから、おそらく事前から決めていたであろう台詞を放った。
「軍の情報部の記録を見ても、レイリア・スノウという人の軍籍が残っているんです。そうした上で、消息不明とされている。貴女は以前、ユアリスさんにこう言ったそうですね?『レイリア・スノウは死んだ』と。軍情報が一般に漏れるとは思えない、かといって軍の情報が一般、失礼ですが民間企業の情報網より劣るとも思えないんですよ、私には」
 内心で舌打ちする。レイリア・スノウについての情報についていまだに残っていたという驚きもあるが、それを消息不明で済ませている軍のやり方もずさんだ。そもそもアレは・・・。
「なぜ断言できたのかは知りませんが、知っているからこその発言なのではないかと・・・これは私の予想ですが、もしかして行方を知っているが口止めされているのではないかと・・・そう思いました」
 悪くない推理だ、おおむね当たっている。しかし、それが目の前に居るとは流石に気づかないのだろう。
「だとして、私がそれを口止めされていたとしたら、なぜあなたたちに話すと思うの?」
 たとえ口止めされていて、行方を知っていたとしても、それならば約束を優先してシラを切りとおす。新聞記者というのは信用商売だ。信用のない記事など誰も金を払わない。
「精鋭部隊に、一緒に来ていただきたいな・・・と」
 話せるわけがない。
「帰りなさいな、私から話せることは何もないわ」
 しばらくの間沈黙が続いたが、四人は残念そうに「そうですか」といって帰っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 血と汗の匂いが鼻につく。
 レイブンホード島で、終戦の印が打ち上げられた。
 長かった独立戦争が終戦を迎え、正式にカセドリア連合王国がゲブランド帝国から独立した日。
 私はその終戦の印を見上げながら、持っていた短剣を握る力すらなくなりその場に座り込んだ。
 ようやく終わったのだ。これでもう、戦場を駆ける必要もなくなる。私の戦う理由はこれでなくなった。軍籍を離れても生活していけるだけの資金もある。
 今後のことを考えて、私は笑った。
 がら・・・という岩の崩れる音。結果に納得のいかなかった一人の兵士がいた。
 ただそれだけの話。
 振り下ろされた斧は私を捉えて、その血塗れた刃に写る自分の姿を、私は理解できなかった。
「いやああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!」
 心臓の鼓動が異様なまでに加速している。それとは裏腹に、全身の血液が凍りつきそうなほどの悪寒。いつもの夢だ、いつもの夢だと自分に言い聞かせる。
 もう終わったことなのだ、過去の悪夢、ただそれだけのはず。心が壊れてしまいそうな悲鳴を上げていた。
 ドンドンドン、どかんっ!
 唐突にドアが激しく叩かれ、鍵が壊されて、イルフリートが部屋に飛び込んできた。
「おいっ!大丈夫かっ!」
 ベッドの上で上半身を起こしているだけの私の姿を見て硬直した後、彼はあわてて顔をそらした。
 私は、その日二度目の絶叫を上げた。

「で、理由を説明してもらいましょーか?」
 ネグリジェから着替えた私は開口一番にそういった。
「いや、あの・・・その・・・」
 さすがに女性の下着姿を見たことに同様しているのかしどろもどろとしている赤髪のウォリアーを押しのけ、自称紳士は簡単に内容をまとめた。
「やはり納得がいかなくてもう一度説得しようということになりまして、やってきたら昼前だというのに反応がない。出かけているのかと思って玄関先で待っていたらうめき声が部屋からしてきて、それが叫び声に変わったんですよ。それであわてて飛び込んできたわけですが・・・」
「・・・そんな大声上げてたの? 私」
「ええ、レイリア!目を開けてっ、レイリア! と」
 最悪、と小さくつぶやき水を一息にあおる。
 悪寒はすでに消え去り、思考は冷静さを取り戻していた。
「・・・ろくでもない話になるわよ?」
 寝言を聞かれてしまった以上、おそらく彼らは引かないだろう。
 話すことには抵抗があるが、悪夢の後だからか私は誰かに話を聞いてもらいたかったのかもしれない。お茶を淹れてから、私は話をすることに決めた。
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