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イグドラシルの継承者~過去編12~

2008-08-28 Thu 02:03
ユリアがリーシアと出会ったのはまだ聖職者として未熟なアコライトとしての修行時代だった。その頃からユリアは、聖職者のあり方、プリーストに与えられる制約に疑問を持っていた。


 自室にはクレイモアや海東剣が所蔵され、ロングメイスなど、癒しや支援とは無縁の品物が幾多も散らばっていた。そのためユリアの師でもある人物、フローライトが彼女の私室を訪れていたなら彼女は聖職者としての資格を剥奪されていたかもしれない。
 しかしそうはならず、彼女は神からの祝福も失うことは無かった。それがつまるところ、彼女が誤まった道を進んでいなかった証左でもあった。
 そんな日々のなか、聖堂で治療修行を受けているときに大怪我をした彼女が運ばれてきたのだ。左腕を大きく損傷し、今にも息絶えそうだったその弓手の少女を見たとき、ユリアの心臓は一際激しく跳ね上がった。
 助けなければならない、なんとしても。
 それは直感的なものでもあったし、天啓のようなものにも感じられた。
 すぐさま駆け寄ったユリアは、普通の治癒魔法ではとても癒すことが出来ないと知って、自らの生命力を治癒魔法の力へと転換した。高位の聖職者ですら行えなかった奇跡を行使した結果、ユリアは昏睡した。その視界で、少女の傷が癒えたのを確認して。
 ユリアが再び目覚めるまでに、一週間を要した。
 それほどに魂に負担をかける奇跡であったことをほかの聖職者たちは問題視した。禁忌にも等しい奇跡、それを邪悪と見るか、神の加護と取るかで教会は二分した。このとき彼女の私室が調べられ、一度は邪悪という判断を下された。
 それに対して反発したのはリーシアだった。
 左腕は後遺症で満足に動かなくなったが、命を救われたのは間違いない。彼女はあろうことか大聖堂に乗り込んで宣言していた。
「人の命を救うことが邪悪と呼ばれるほどの大罪なら今ここでこの命を神に返しましょう、しかし彼女はいまだ神の加護を失っていない。お前たちはそれを邪悪と罵るのか! ならばお前たちの信じる神は悪神か!」
 神の加護を失っていないこと、唯その事実ゆえにユリアは聖職者資格を剥奪されることは無かった。しかし、結果として教会から疎まれ蔑まれるようになって孤立していった。
 彼女たち二人の付き合いはその頃から始まり、5年の月日がたった頃、ユリアは国王から直々に神官騎士団の団長として推薦され、リーシアは宮廷近衛騎士団団長として抜擢された。
 
 長い夢を見ていた気がする。夜の帳がすっかりおち、河を流されながらユリアは星空を見上げていた。最後にこんな星空を見たのは何時だっただろうか。
 涙が止まらなかった。長い時間を共にすごし、背中を任せられた唯一の相手が、自分の半身が失われたのだと、自分の心の隙間が告げていた。
「おい、あれなんだ?」
「人・・・?あの服、あの髪の色は・・・まさかっ!」
「ゆ、ユリア様っ!?」
 遠くで声がした。今はただ、何もかも忘れて深い眠りに飲み込まれたかったが、冷たい河の水がそれを許さなかった。
 聖騎士団の団員に抱きかかえられたまま、仲間の集まるテントまで運ばれる間、なぜ私だけが助かってしまったのかをぼんやり考えていた。
 テントに運び込まれ、仲間たちが駆け寄るの光景すらどこか遠いものに感じられた。
「ユリア無事だったのか、よかった」
「リーシアさんは・・・一緒じゃないんですか?」
 濡れた服を着替え、飲み物をもらって一息ついてからユリアは事の顛末を話した。
 リーシアの死、ヴァルキリーの降臨、イグドラシルの封印、唯一話さなかったのはユリアが半人半神になったことだけだった。
知られたくなかった。
全ての話を聞いた仲間たちは全員が、沈黙したままだ。
ユリアはテントの端に寝かされているアレスとレイシアを見た。二人ともひどい有様だった。アレスは全身の傷がひどい、それに生命力もわずかしか残っていなかった。生きているのが奇跡というほどだ。
レイシアは腕と足が吹き飛んでいる。おそらく術式の反動だろう。ユリアはそう直感し、治癒魔法を唱え始めた。すでにヒールで回復できるような傷ではない。
「Resurrection!」
 神聖術の光が二人を包み込む。アレスの全身の傷、それに失われた生命力が、レイシアの四肢が、依然と変わらぬように修復されていく。ユリア自身も驚くほどの治癒力に直感した。
 これが――神の魂に宿る力。
 これだけの力をもってしてもなお、失われた命は取り戻すことなど出来ないのだ。
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