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イグドラシルの継承者~過去編 11~

2008-07-28 Mon 01:14
「命を粗末にするな愚か者」
 突然の頭上からの声にユリアは上を見上げた。そして息がとまった。
 本物の神を見たのは初めてだった。
 戦乙女ヴァルキリーが、伝承どおりの姿でそこに悠然とたたずんでいた。
「う、そ・・・本物の・・・」
「本物にきまっている。すまんな、力を貸すことが出来ず。我々神々は魔物との間に休戦協定がある、それ故に手を出すことができなんだ。その結果お前の愛する人を死なせてしまったのは我らの愚かさ故だ、恨まれても何言えん」
 あまりのことに言葉なく佇んでいると、ヴァルキリーはユリアの隣を素通りしてイグドラシルへと向き直った。
「イグドラシルへの封印は私が行おう。せめてもの役目だ」
 キィン
 という高い音が響くと同時に、イグドラシルの幹が神聖な封印によって保護されたのをユリアは感じた。やる事がなくなってしまった。帰り道も、もう無いだろう。
 リーシアの遺体の隣に腰を降ろした。剣は抜き、傷も癒したが戻ってはこなかった愛しい人を前に、ユリアは静かに泣いた。
「ユリアよ、命を捨てる覚悟があるのなら、一つ頼みがある」
「何よ・・・いまさら」
「そう怒らないでくれ、といっても・・・その権利も私にはないが・・・お前は神の領域に人の身ながら踏み込んだ。正直驚いている」
「だからなによ」
「おそらく次のイグドラシル侵攻が始まるのは千年後だ。それまで、お前に生きて伝承を伝えてほしいのだ」
「私はあと60年もすれば老いて死ぬわ」
 当然だ、神の領域に踏み込んだとはいえ、人間の体なのだから。
「うむ、だからな・・・」
 ヴァルキリーは自分の胸の中に手を沈める。次に取り出したときにはそこには小さな光る結晶が握られていた。
「神族の魂の欠片だ、これをお前の魂に入れればお前は神に等しい寿命を得る。頼む、おそらく千年後の戦いは今回の戦いよりも規模が大きいだろう。だからこそ、今から次の準備をしておかなくてはならないのだ」
「そんなの・・・アンタたちだけで勝手にすればいいじゃない!」
 リーシアの遺体を抱え、ユリアは唯ひたすらに外界からの意識を切断しようとした。この一年、いやそれよりも前から、リーシアは特別な存在だった。
 その存在が失われた今、生きること自体が煩わしくなっていた。たとえ何年生きようと二度と再開することは出来ないのだから。
「・・・唯一こちらから提示できる条件がある」
 その言葉に、ユリアはいやおうなく意識を引っ張られた。私が今望む唯一のこと、それ以外であるのならどうでもよかった。どうせ数分の違いだ。わずかに残る意識でヴァルキリーの次の言葉を待つ。
「そのもの、リーシア・デュセンバーグの魂はすでに肉体から離れている。次の転生は千年後だ。本来なら記憶は消去されるが、此度のこともある。もしもユリア、お前が私の頼みを受け入れてくれるなら、記憶は封印処理にとどめよう。意味が分るか?」
 ユリアは小さく震えた。目の前に提示された可能性は、あまりにも小さく、そして遠い。
千年の月日を生きて、私はいったいどうなるのだろう。という恐怖もある。
 あまりにも小さく遠い光にすがるのか、それともここであきらめるのか。あきらめれば遠くに見える小さな光は消えてしまうだろう。そんなことは出来なかった。
「記憶の封印を開放できるかどうかはお前次第だ。正直、対等な交渉とはとても言えん。だが、どうか頼む」
「・・・いいわ、その条件で手を打ちましょう」
 可能性があるのなら、最後まであきらめない。そう、決めたもんね。リーシア。
「ありがとう、若き聖職者よ」
 ヴァルキリーの手がユリアの胸の中へと沈んでいく。魂に直接触れられるその感触に、ユリアは心底恐怖した。おぞましいなどというものではない。自分の根源に触れられるその感触を、唯ひたすらに耐える。気がつけばヴァルキリーの手はすでに胸の中から引き出されており、自分の中に自分とは異なる何かがあるのを感じた。
「このフベルゲルミルの泉に流されるままにいけば、お前たちの住む町の東にある川に出る。お前の仲間はその河のほとりに野営地を作っている。ここからの唯一の脱出方法だ」
「・・・わかったわ」
「お前の愛しき人の亡骸は私がヴァルハラへ連れて行こう。次の転生の時使うゆえ、了解してほしい」
 ユリアは無言で頷く。抱きかかえていたリーシアの亡骸を強く抱きしめてから、ヴァルキリーへと手渡した。そのリーシアに、自らが提げていた十字架のペンダントをかける。その意図をヴァルキリーも汲み取ったのだろう。小さく頷いて答えた。
 光に包まれて消えていくヴァルキリーとリーシアを見送ると、ユリアは自分の成すべきことを考え直す。
 まずはみんなと合流して事の顛末を話す。次に、おそらくこのまま南下して新たな土地を探すことになるだろうから、それに合流する。全ての道を見届けてから、千年という膨大な月日をどうやって過ごすのかを考えればいい。
 意を決してユリアはフベルゲルミルの泉へとその身を投げた。流れに身を任せ、漂うままに流されていく。まるで母の胎内にいた頃のように、心の安らぐ時間だった。
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