主に小説の更新を中心に、日々の事やゲームの事を綴っています。
スポンサーサイト

-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑

イグドラシルの継承者~過去編 10~

2008-07-05 Sat 08:54
 イグドラシルの根はことごとくえぐれ、黒騎士の鎧は砕けていた。
 優位に立ったつもりで居たがリーシアだが、一つ誤算があったのだ。鎧を砕いてからというもの、黒騎士の速さは尋常でなくなっていた。
 鎧を砕くのに持てる矢全てを使ってしまったため、鞭一つで戦わなければならなかったが、接近すれば巨大な大剣に引き裂かれそうになる。
 足場がどんどんと悪くなっていくのもリーシアの不利に拍車をかけていた。一瞬でも動きが鈍れば、おそらく一撃で消し飛ぶ。その確信がリーシアにはあった。
 黒騎士が大きく大剣を振りかぶり、横殴りに薙いだ。豪、という風を引き裂く音が響く。その一瞬を見逃さずリーシアは間合いを詰め鞭を振るった。
 黒騎士の体が引き裂かれ血があふれる、しかし黒騎士は倒れることなく追撃を放った。大剣から手を離し、腰に挿してあった短剣でリーシアの胸を貫いた。
 かろうじて即死を免れたリーシアだが、すでに体を動かすことはできなかった。黒騎士は決着はついたとばかりに剣を納める。
「見事だったぞ、人間の娘。我の鎧を砕きここまでの手傷を与えたことは賞賛に値する。だが、貴様の武器では我に一撃で致命傷を与えるには程遠いのだ。そこが差だ・・・」
 その言葉に返事をすることも、理解することもリーシアにはできなかった。
 遠くで、ユリアの声が聞こえた気がした。

 迫り来る魔物全てを殲滅したユリアはイグドラシルの根の道をひたすらに追いかけていた。嫌な予感がする。グラストヘイム最強といわれるほどの使い手を倒すことなど出来ないだろうと思いつつも、胸にあふれ出る嫌な予感がぬぐえない。
 きっと道を進めば何気ない笑顔で迎えてくれる。そう自分に思い込ませながら走り続けた結果、ユリアは絶望を見た。
 胸に剣を突き立てられ倒れる愛しき人と、それを見下ろす黒騎士。何があったのか、結果がどうなったのか、そんなことの全てがどうでもよくなりユリアはリーシアのそばに駆け寄った。
「リーシア、リーシア! うそだよね、冗談でしょう? 返事をしてよ! リーシアっ!」
 黒騎士はすでにハイプリーストが戦意を喪失していることを悟り、その場を後にしイグドラシルの幹へと歩をすすめた。
 一歩、二歩、三歩
 そして、背後で自分の背筋を凍らせるような殺気が膨れ上がったのを感じて振り返った。
 そこには、先ほどの戦意を失ったハイプリーストとは明らかな別人が立っていた。
 かつ、かつ、かつ
 無言で杖を片手に持ち、黒騎士に近寄る。黒騎士は何か違和感を感じつつ剣を構える。ユリアは実に無防備に黒騎士に向かって近づいていく。だというのに、黒騎士は手を出すことも出来ずに唯立ちすくんだ。
 ひゅっ
 という風を切る音がして、次の瞬間黒騎士は横に吹き飛んでいた。
 あまりの衝撃に一瞬意識が飛びながらも、黒騎士はすぐさま起き上がった。今まで生きてきた中で最大の危険を感じ、出来うる最大の警戒をもってして対応する。
 しかし次の結果もまた同じだった。
 見えない。
 プリーストの振るう杖が、一切見えない。それは理解を超えた速度だった。
 有り得ない。
 人間がその領域に踏み込むことなど不可能だ。なぜなら人間の体は脆弱なのだから。
 気づけば彼女の杖を持つ手が血まみれになっていた。黒騎士の血ではない。ユリア自身の血によって濡れていた。
 限界を超えた身体能力を発揮した代償だろう。腕の筋肉が、細胞組織が悲鳴を上げて瓦解しているのだ。しかし、彼女はいかなる方法を持ってして限界を超えたのか。
 一方的な防戦を強いられた黒騎士はそれを考えることすらやめた。
 このまま戦ってもおそらく勝てまい。今回の作戦は失敗に終わったのだとあきらめて、帰還のためのアイテムを取り出し、掻き消えた。
 リーシアを殺した敵が消えたのを呆然と見ながら、ユリアはその場に崩れた。聖職者にある能力を高める魔法を、あらゆる制限を解除した結果彼女の体は限界を超えたのだ。
 しばらくのあと、ユリアは自らに回復魔法を施すと起き上がり、リーシアのなきがらを抱きながらイグドラシルの幹へとたどり着いた。
 樹齢数千年という超巨大樹の姿はあまりにも美しかった。使者をよみがえらせるという、イグドラシルの葉は、存在しなかったが。
「リーシア・・・わたしも、すぐそっちに行くから」
 ユリアは自分の持てる力全てを振り絞り、邪悪なものがイグドラシルの幹に近づけぬように封印をするつもりでいるのだ。
スポンサーサイト
別窓 | 小説・ノベル | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑

<<ブログにての近況報告です | 蒼月雪歌の活動録 | 現在のメインキャラ紹介>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL


FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 蒼月雪歌の活動録 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。