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イグドラシルの継承者~過去編 9~

2008-06-29 Sun 18:15
 刃こぼれですでに使い物にならなくなったカタールで敵を殴り飛ばしながら背中を任せた相棒を思う。お互いに、限界に近かった。
 撤退のタイミングを誤った二人は撤退途中に敵に囲まれて足を止めてしまったのだ。
 途切れることのない魔物の群れ。切り捨てた無残な骸。その両方に埋め尽くされそうになりながら、ただ無心に腕を振る。ソレは敵を切り捨てるためなのか、絶望という名の現実から目をそむけるための行為なのか、すでにわからなくなっていた。
「・・・燐歌、何匹殺った?」
「数えてる余裕があるわけないでしょう?」
「同感だ・・・」
 無造作に近寄ってくる魔物を殴りつけると、すでに限界を超えていたカタールは無残にも砕け散った。使えなくなった武器には目もくれずに懐から小さな赤い石を取り出す、無造作にばら撒いて、呪文を唱える。赤い飛沫が周囲に広がり魔物が怯む。暗殺者が使うきわめて危険な毒薬は魔物にも有効だった。
「撤退する余力はあるか?」
「やってみなけりゃ、わからないわね」
「一瞬隙を作る、タイミングを見逃すな」
 刻の懐から取り出された数十の赤い結晶は空高く投げられ、それが彼の技術によって開放された。猛毒が魔物たちの頭上から降り注ぐ。
 それと同時にリンは駆け出していた。刻もそれに続く。避難場所とされる大正門までは遠い。しかしそれも常人にとってのことだ。疾風のごとく駆け抜ける二人の前に、すぐに門は目視できるようになっていた。

 限界まで高まり、張り詰めた魔力。すでに結界を発動させるには十分すぎる魔力が集まっていた。大気は張り詰めた魔力によって振るえはじめ、大地が鳴動する。世界の終わりがもしも始まるとすればこんな風に始まるのだろう。すでに術の中心であるレイシアの周囲の大地は崩れ始めていた。
 そんな状態であるというのに、術がいまだに完成しない。まるで何かが結界の完成をとどめているように。
 リルシェがその異常に気づいたとき、レイシアの腕がはじけた。
「師匠!」
「だまって、なさい・・・リルシェ」
 術の完成をとどめていたのはレイシアだ、そう確信したリルシェは師に歩み寄り体を支える。同時に、魔力の本流に飲まれ全身が激痛に襲われた。
「離れなさい・・・リルシェ、貴方まで・・・巻き添えを食らうわ」
「ダメです、師匠はいつもいつも一人で背負いすぎなんです! 頼りないでしょうけど、僕たちのことをもっと信じてください」
 魔力の負担が明らかに軽くなっているのを、レイシアは感じていた。
 あと少し、これなら耐えられる気がした。

 刻と燐歌が、シャルフィアとローズとスノウが北東の門にたどり着いたのはほぼ同時だった。ほぼ全員が満身創痍だったが、それでも足は止まらなかった。
 倒れているアレスとレインの二人を、レインを刻が、アレスをシャルフィアが抱えて門の外まで脱出した。
「フィルア! レイシアの所まで行って頂戴!」
 指示を受けたシャルフィアの鷹は風を切り裂きながら己の使命を全うするためだけに空を駆けた。

 レイシアの視界にシャルフィアの鷹が映った。フィルアはレイシアの周囲を飛び回りながら鳴き続ける。それが合図であるとレイシアは確信した。
「封鎖結界を起動する! 全員、反動に備えなさい!」
 大規模な魔法を使う場合、その反動が発生する。それを抑えるために触媒が用いられる。その触媒を各自、もてるだけ持っていたのだ。次々と触媒が砕けていくのを感じながら、レイシアは自分を抱き支える弟子のことを思った。
 最悪、目の前で自分が爆発四散することもありえる。その可能性をレイシアは振り払った。この弟子に、そんなもの見せるわけには行かない。
 必ず生還する。そう自分に言い聞かせた。
「封鎖結界、起動!」
 直後、グラストヘイムをまばゆいばかりの光が包み込むと同時に、反動がレイシアを襲った。
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