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イグドラシルの継承者~過去編 8~

2008-06-24 Tue 11:20
 降り注ぐ灼熱した隕石も、魔の雷すらも退け、いまだ聖騎士はそこに立つ。
 そのとなりで変わらぬ笑顔で聖職者が騎士を支えていた。
『・・・貴様、何者だ』
 その問いに、聖騎士は答えない。
『貴様等は本当に人間かっ!』
 その問いに、聖職者は答えない。
 十字剣が振り上げられる。白銀色に輝く十字はバフォメットの鋼鉄のような体毛をやすやすと切り裂き肉を抉る。
 聖職者の歌が聞こえる。突如として現れる悪魔払いの結界に、ダークロードが呻き声を上げる。
 優勢に見えた戦いは、限りなく張り詰められた糸のような状態でしかなかった。それを悟らせないために、二人は決してその場を動かない。笑みを絶やさない。
 七度目の悪魔払いの結界は彼女に極限までの負荷をかけていた。もう次の結界を構成するだけの魔力はない。
 幾度となく隕石と魔の雷を防いできた純白の鎧はすでに軋みをあげている。それでもなお、二人は逃げない。
 バフォメットが振り上げる大鎌がアレスを捕らえる。横殴りの大鎌の一撃を、アレスは腕一本で止めてみせる。鎧にヒビが入る。それでも決して揺らぐ事なくバフォメットを睨みつける。
 ダークロードの手がレインを捕まえようと伸びる。その手を癒しの奇跡と神の加護が撥ね付ける。
 やがて両者が動かなくなった頃、レインが倒れた。直接のダメージはない。精神的な負荷と疲労によるものだろう。
『・・・どうやら、やせ我慢だったらしいな』
『我らを怒らせた罪、覚悟するがよい・・・』
 魔王と呼ぶにふさわしい二対が、同時に襲い掛かる。それをアレスは受け止めた。ヒビの入った鎧は砕け散る。それでも彼は揺るがない。
「・・・レイン、もう十分だ。行け」
 その言葉が何を意味するのか、わかっていた。それでも彼女は動けない。
 一瞬の静寂。そして巨大な光の柱が巻き起こる。
 光は魔王を包み込み、雲を突き破り大地を震撼させる。
 聖騎士の捨て身の秘儀、裁きの大十字。それが意味するものをレインは知っていた。そして、動けないまま意識を失った。

「今のは・・・アレス・・・?」
「ま、まさか・・・あれ・・・」
 空を貫いた巨大な光の柱を見て、レイシアとリルシェの詠唱が止まる。やがて光の柱は薄くなり、かすれて消えた。回りの誰もが、それが何なのか知っていた。
「命と引き換えの秘儀・・・裁きの大十字-グランドクロス-か・・・アレスめ」
 小さな呟きはリルシェにしか聞こえなかった。
「全員、準備はいいか!封鎖結界の陣を起動させる・・・失敗は許されん!」
 レイシアの一括に、全員が再び結界を作るための陣に復帰する。最後の一瞬、そのギリギリまで、レイシアは粘るつもりだった。
 まだ内部に残っている人のために。

 魔物の海を駆け抜けるペコペコ。その姿はすでに傷だらけだった。
 騎乗用ペコペコ専用の鎧は傷だらけになり、紅い足跡が地面に残る。それでもペコペコの足は淀まない。訓練されたペコペコは最後の一瞬までも主人と共にある。
「くそ・・・数が多すぎる・・・」
「大気の精霊、風の精霊よ私の声を聞け・・・空を登り光を得て、今降り注げ・・・サンダーストーム!」
 短く早い、歌うような詠唱のあと、広範囲に稲妻が落ちる。地面を抉り魔物を吹き飛ばすそこを、ペコペコが駆け抜ける。
 北東の門へ向けての敵陣突破は自殺行為に近いものだった。しかし、そこ以外にグラストヘイムから出ることは出来ない。故にその無謀を実行した二人はすでに満身創痍だった。
「・・・こいつも、そろそろ限界だ」
 がしゃんがしゃんがしゃん、と空洞の鎧が響かせる足音が周囲を埋め尽くす。どれだけ吹き飛ばしても、切り捨てても、なぎ払っても、その数は一向に減らない。
「私の命はアンタに預けとくわよ。ローズ」
「やれやれ、気安く言ってくれる・・・落ちるなよっ!」
 手綱を強く握る、その主人の意思に答えるようにペコペコが雄たけびを上げる。
 右手には槍を持ち、敵の一郭をなぎ払う。そこに落ちる稲妻に僅かな退避路が出来る。
 無数に飛び交う矢と剣撃の嵐をかいくぐる。其の間にもキズは増える。そして、ついにペコペコが倒れた。
 力尽きたペコペコが速度を落とさずに倒れる。振り落とされた二人は城の壁際に激突した。
「げほっ・・・」
 激突し倒れた二人を空洞の鎧が取り囲む。倒れたままのスノウをかばうように前に出る。
 ペコペコはすでに事切れていた。最後の一瞬まで自分達のために動いてくれたペコペコに感謝しつつ、絶望的な状況に思考をめぐらせる。
「ろー・・・ず・・・逃げ、て」
「喋るな、傷が悪化する」
「いい、の・・・もう、無理だよ・・・」
「それ以上言うな」
 槍を構える。最後の一瞬まで・・・いや、その一瞬すらも諦めるつもりはない。
 敵の戦列がじわりと動く。一瞬の交錯に賭け、最強の一撃を叩き込むつもりでいた。しかしそのタイミングは横合いからの乱入者により起こることがなかった。
「二人とも無事!?」
 遠方から放たれた矢が、空洞の鎧を紙のように引き裂きながら突き抜ける。突破口を見出したローズは迷うことなくスノウを抱きかかえて走り出した。
 屋根伝いにシャルフィアが二人を追う。もはや戦う余裕のない二人を手伝いながら共にグラストヘイムの大正門へと走る。
 いつのまにか屋根から下りて隣を走っているシャルフィアが数十本の矢をまとめて掴む。
「っ・・・アロー・・・シャワーっ!」
 大気を切り裂いて無数の矢が飛ぶ。足止めではすまない威力にローズが驚く。
 大正門の前まで走りついたとき、そこで白い光の柱が上がった。
 周囲の空気が一瞬にして巻き上がり、息が出来なくなる。
「今のはっ・・・」
「アレスのグランドクロスだわ・・・行きましょう。一緒に連れ出すわよ!」
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