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イグドラシルの継承者~過去編 7~

2008-06-23 Mon 02:32
「魔物を倒す必要は無い! 逃げ切るのだ、新たな土地まで!」
 北西の門は戦う力を持たない民が殺到し、それを守るように騎士たちがしんがりを勤めていた。最終的な目的は魔物の軍勢の殲滅ではなかった。
 宮廷魔術師団の副長を勤めるレイシアが考案したのは、全ての民をグラストヘイムから脱出させたのち、王都を儀式魔法により封印し内部に魔物を閉じ込めるというものだった。
 その突飛にして規模の大きすぎる魔術を前に、多くのものが、特に魔術師たちが不可能だと反発したが、レイシアの提示する術式の完璧さに誰もがその意見を翻した。
 この術式ならば可能だ、と。
 今現在、グラストヘイム北東の門を出た先で魔術師団が大規模な儀式魔法の術式を展開している。術式はほぼ完成しており、後は発動を残すのみとなっている。
「術式の発動準備をして待機!」
 レイシアの指示が飛び、莫大な量の魔力がグラストヘイム全域を包み始める。あとはレイシアが発動を行うだけで術式は完了する。
 術式が完了すればグラストヘイムの中には入る事も出来ず、中から出る事も出来ない。何年か、何十年か、何百年かしてそれが壊れるまでの間、王国は封鎖される。
 バチバチと青白い稲妻が飛ぶ。結界を構成するべく、術式がグラストヘイムを空も地下も、その全域に張り巡らされている。
「師匠・・・ホントに、やるんですか?」
「仕方がないでしょう・・・ココで封印しないと・・・国は捨てます、覚悟なさいリルシェ」
 師匠であるレイシアの言葉をぐっと飲み込み、リルシェも術式の魔力供給に入った。まだ未熟なマジシャンでありながら、莫大な量の魔力があふれ出し、術式に注ぎ込まれていく。きっと、後数年もレイシアの元で修行を積めば高位の魔術師として成長を見せてくれるのだろう。
 もう少し・・・時間がほしかったな。
 レイシアは術式の発動が自分の命すら奪いかねない危険なものであることを誰にも話していない。死なないつもりで居るというのが半分、話せばとめられるからというのが半分だ。もしもこの術式を終えた後に、私の命が残っていたのなら――。
 ほんの少しだけ、先のことを考えながらレイシアは覚悟を決め、最後衛である聖騎士団からの合図を待った。

一向に数の減らない魔物の軍勢を前に燐歌というアサシンは息を切らせつつ、カタールを振り続けた。彼女の力量は隠密行動部隊の副隊長を務めるほどであり、魔物たちはことごとく紙のように切り捨てられていく。
問題だったのは体力が有限であることだ。終わらない敵の前では、いつしかいかなる強者も倒れるときが来る。
舞うようにカタールを振り、無慈悲に魔物を切り裂きながら、ふと過去のことを思い出した。
そういえば、踊ってるみたいだって言われたことがあったなぁ――
リーシアとユリアという二人組みは忙しい日々の中でもどこか余裕を持っているように見えた。合同戦闘訓練の際にそんな感想を出されて私は最初憤慨した。
そんな気安いものではない、と。しかし、リーシアというジプシーと相対したときその言葉が純粋なほめ言葉であることを理解して、自分で自分を追い詰めていたことを知った。
リーシアは踊るような足裁きで、まるでしなやかな水のように私の攻撃をことごとく回避し続けたのだ。無理の無い動き、無駄の無い重心の移動が生み出す動きは、体に負担をかけず、無理なく無駄なく最適な動きを生み出す。十数分の訓練戦闘が終わった後、私の動きはそれまでの必死に次へつなげる運動から、自然と流れるように次へとつながる動きへと変わっていた。
あの経験がなければ、今頃疲労に沈んで死んでいただろう。いまの動きを身につけることが出来たからこそ、私はここに立っていられる。そう確信していた。
また会えたら、今度は笑いながら一緒にお酒でも飲み交わして、みんなで生き残ったことを笑い会える――
その日を信じて、もはや何匹目か分らない魔物を切り捨てた。
やがてグラストヘイムの空を青白い稲妻が覆い始めたのを撤退の合図として、彼女は駆け出した。

  落ちる稲妻、巻き上がる砂埃。そして悲鳴。
 グラストヘイムの大正門の前での攻防はそんな巨大な稲妻によって戦況を変えた。
 はれていく砂埃の向こうに、多数の死者を出した戦列と、その原因となる稲妻を放ったものが姿をあらわす。
『人間風情が』
『我らを甘く見たな』
 巨大な大鎌を持つ山羊の角を持つ悪魔と、闇を抱えた暗黒の魔道師が、そこにたたずんでいる。
「バカな・・・バフォメットに、ダークロードだと・・・?」
 叫ぶアレスの隣でプリーストの女性がおびえる。そのおびえもすぐに消え、アレスのとなりで震えもせずに杖を構える。
「レイン、お前は逃げろ・・・ここはオレが抑える。神官騎士団!総員退避しろ!無駄死にになるまえにだ、急げ!」
 騎士団長のアレスの声を聞き、神官騎士団が盾を構えたまま後退を始める。そんななか、アレスとレインだけが戦場に残る。
「レイン、早く行け!」
「嫌だよ」
「レイン?」
「死ぬつもりもないよ、二人で・・・生きよう、だから・・・私も一緒にいる」
 その言葉から、彼女の決意が伝わる。自分の妻にして高位神官である彼女を、ここまで心強く思ったのはアレスは始めてだった。
『愚かな・・・我らを相手に二人で挑むか』
『ならば、灰燼に帰すがいい!』
 数瞬後、巨大な隕石が二人をめがけて落下した。対するのは白銀の十字。隕石を切り裂きその光は天までも焦がす。
「オレをそこらの神官騎士団といっしょにするな・・・戦神の聖騎士の名はダテじゃない」
 白く輝く十字剣を構える。その清浄な気配に魔性の者が僅かに後退する。その隙を彼は見逃さない。
「唸れ神剣、我が眼前に相対する魔性、その一切を切り裂け。HolyCROSS!」
 神への祈りと戦いの歌を叫び、十字剣を振るう。その軌跡が白く輝き巨大な十字となってバフォメットとダークロードを襲う。
 巻き上がる砂煙の中、手ごたえを感じたアレスは次の一撃に備える。それと同時にレインに対して献身を行う。淡い光が彼女を包む。
「神よ、憐れみたまえ!汝に祝福あれ!」
 レインが祈りを口にする。その祈りはアレスの身体を優しく包む。神による祝福と加護は魔性の者に対して絶大な力を持つ。
 砂煙がはれる。そこには、変わらぬ二対の魔性のものがいた。
『・・・少しは出来るようだな』
『ならば手加減はするまい、遊んでいるヒマもないのでな』
 そして、闇の王と光の使徒の戦いは始まった。
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