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イグドラシルの継承者 過去編 3

2008-06-10 Tue 02:43
王城の一室を借りて、三人は顔をあわせていた。一様にしてその表情は暗い。
時間が足りないのだ。圧倒的に。
特にユリアなどはまだ数年、あるいは十年近い余裕があると思っていた。それ故に、後一年しか残されていないという事実を前にして困惑しているのだろう。


シャルフィアが入れてくれたお茶を口にしながら、たった一年という猶予と、するべきことを考える。しかしあまりの事実に頭は上手く回らなかった。
「さて、どうしますお二方」
この部屋で腰を下ろしてからの暗い沈黙。それを破ったのはシャルフィアだった。その目には迷いこそあれ、ためらいというものは無いように感じられた。
貴方たちに出来ないのなら私がやります。
その目ははっきりとそれを告げていた。
「さて、ずいぶんと予想外の話だったからそうすぐに考えはまとまらないわね。とはいえ・・・まずは各組織の指揮官に当たる人との連絡を円滑に行えるようにしたいわね」
 第一にやるべきことをユリアはすぐに口に出した。その意見にシャルフィアも頷く。人の上にたち、指揮をする立場というのならおそらく私よりもユリアのほうが才がある。常々思っていたことを確信に変えながら、私は二人の顔を眺めた。
 とん、と隣にいたユリアがいきなり私にもたれかかってきた。その顔はいつもどおりの飄々としたもので、深い考えなど無いようにみえる、それでも――
「リーシア、怖い?」
「怖くはない・・・けど」
「じゃあ、不安?」
「それは貴女もでしょう?」
「じゃあ、なにをためらってるの?」
 シャルフィアの前だというのにユリアは私のひざの上に横になると、そのまままっすぐ見上げてくる。その瞳にある種の決意が覗いているのを見て、私は苦しくなった。
 この二人と私では、違いすぎるではないか・・・。
「リーシア、自信を持ちなさい。貴女はこの私と戦って勝って、宮廷近衛騎士団の団長になった。あなたはこのグラストヘイムの誰よりも強いわ」
 だが、それはあくまで個対個の強さだ。
「この王国の多くの兵士は貴女の指示で動く。貴女に迷いがあるなら私が払う、貴女の戦いを邪魔するものが居るなら私が止める。だからもっと自信をもって、貴女は一人じゃないんだから」
「ユリアの言うとおりだ、不安はあるだろう。だがためらっている猶予はもうない。不安があるのなら我らが支えよう、ためらいがあるのなら我らが後押ししよう。だから頼む、我々を導いてほしい。任せるに足ると、私は思っている」
 まったく、信じられない。
 こんな状況になって、震えているような女を信用しているなど悪い冗談のようだ。だが二人の目は一切の疑いを許さないほどにまっすぐに私の心を射抜いた。
 なら、私は私のやれることをするしかない。どこまで出来るかわからないとしても、出来る最善を尽くそう、そう心に決めたとき、迷いは不思議とどこかへ消え去った。
「分ったわ。自信は無いし、どこまで出来るかわからないけど・・・できる最善を尽くしましょう」
 ユリアが小さく微笑み、私のひざから体を起こした。

 その日、日暮れまで話し合いまとまったことを翌日から行動に移すことになった。
 ユリアは自室まで帰るのが面倒だといってとうとう私の部屋に泊まることになった。私自身も、まだ不安が残っていたため、一人で寝るよりも穏やかな眠りに誘われていった。

 翌朝になり、正装よりは実戦的な戦闘服を身にまとい、各組織の長たちに会いに行った。
 聖騎士団団長、アレス。
 隠密活動部隊隊長、刻。
 グラストヘイム騎士団団長、ローズ。
 魔術学院学長、スノウ。
 そして――宮廷魔術師団総統、ノルン。
 理由などを話した結果、アレス、刻、ローズ、スノウは快諾してくれた。それよりも彼らが気にしたのは期間の短さである。限りある時間、それも一年という短い時間をどう使うか、そこが問題だった。
 そして日が暮れる頃になって最後に向かっているのが、宮廷魔術師団総統、ノルンの住居である、王城の地下実験室だった。
 その道すがら、ユリアはリーシアに向かって声を潜めてつぶやいた。
「ねぇ、リーシア。ノルンのことをどう思ってる?」
「ぇ?」
 彼女の発言の意図はすぐに分った。果たして彼は信用に足る存在なのか、ユリアはそのことを言っているのだ。
 私はしばし逡巡し、分らないと告げた。
 幼い頃より魔術師としての英才教育を施された彼には、やや人としての情緒、あるいは感情や価値観というものにわずかなひずみを感じていた。式典などでグラストヘイムの実力者が集まる祭典でも、彼のまとう雰囲気は異質だったからだ。
 薄暗い石造りの道に足音が響く。二人してどうしたものかと逡巡していると、思わぬ人と目があった。
「こんな時間にどうしたのです、お二方」
 右手に杖を持ち、豊かな肢体を短いスカートで包んでいる。高位魔術師の称号を与えられたハイウィザードであり、ノルンに次ぐ権限を持っている。すぐさま私は閃いた。
 ノルンより、よほど信用できるこの女性、レイシアをメンバーとして迎えてはどうかと。私の表情からその考えを察したのか、ユリアもそのほうがいいと思うわと同意する。
 王城の一室を借りて、レイシアと机を囲む。思えば彼女と明確な目的を持って言葉を交わすのは今日が初めてかもしれない。
 話し終わってから、彼女の強烈な意思の眼差しによって射すくめられたとき、私は判断を誤ったかと思った。
「つまりお二人は・・・このグラストヘイム王国最高の魔術師である、ノルンを認めず、私にそのお話を持ってきたわけですか?」
 その言葉に含まれた強い意志は、まるで一筋の迷いも無い。どう答えるのかとしばし逡巡している間に隣でユリアが凛とした声で告げた。
「そのとおりよ。貴女には悪いかもしれないけれど、彼の魔術には闇が混ざって見える。慈悲もなく、意志もなく、唯奪い、殺す。そうした感情が含まれていると私は思う。だからこそ彼は相応しくない、私はそう思っているわ」
 しばしの沈黙が部屋を支配した。
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