主に小説の更新を中心に、日々の事やゲームの事を綴っています。
スポンサーサイト

-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑

イグドラシルの継承者 2

2008-06-09 Mon 09:03
―謁見の間―
 謁見の間が私は好きではない。仰々しすぎる、というのもその理由の一つだが本当の理由はほかにある。
 怖いのだ。
 信じられない広さに高さ、そして玉座の後ろにある巨大な一枚岩で作られた大扉。その扉こそが私の恐怖の根源であると気づいたのは三度目の謁見のときだった。




 この扉の奥にただならぬものが隠されている。それを確信するまでに時間はかからなかった。おそらく一年に一度も開かれることの無い扉が開くとき、何かとんでもないことが起きそうな気がするのだ。
「宮廷近衛騎士団団長、ジプシー、リーシア・デュセンバーグ」
「神官騎士団団長、ハイプリースト、ユリア・シャープムーン」
「「二名、馳せ参上致しました」」
 広い謁見の間に、二人の名乗りがこだまする。玉座に座る王は厳かな空気を支配しながらも二人を見つめ優しく微笑んだ。
「うむ、楽にするがよい。ここからの話は内密なものだ、人払いを」
「はい、閣下」
 そう答えたのはシャルフィアというスナイパーだ。王がもっとも信頼して側近から政治までを任せるそのスナイパーは、まだ年のころ20を超えたばかりというところだろう。
 強い口調で護衛の兵士たちを全員下がらせると、再び王の隣でひざを折る。
 王への忠誠ならばおそらくこの王国の誰にも負けないであろう護衛騎士は、王の次の言葉を静かに待つ。
「リーシア、それにユリアよ、もっと近くに寄るがよい。内密な話ゆえあまり大きな声では話せぬ話じゃからのぅ」
 シャルフィアもその言葉を促すように、目前まで来るように目で促す。
 二人はそれを読み取って、王のすぐ前まで足を進めた。広大な部屋に足音だけが響きかすかな不安がよぎるが、それも壁に解けるようにすぐに消えた。
 王のまとう雰囲気のなせる業だった。
 グラストヘイムの国王は威圧する王ではなく、全てを包み癒す王だった。
「リーシア、それにユリアよ。戦いのときが迫っておるのを感じておるか?」
「戦いの・・・時、ですか?」
「うむ、おそらく猶予は一年あるかないかじゃろう。不穏な空気が漂っておる。シャルフィアにも調べさせたが、魔物たちの動向も近年荒くなっておるらしい」
 ユリアは旧知の仲であるシャルフィアを見る。頷き返してくるシャルフィアを見て、それが唯の予感ではないと確信した。
「年々魔気が濃くなっていくのは感じておりました。神官騎士団ならばいつでも動かせるように内部的にも整えてあります」
 ユリアが隣で言った台詞に一瞬ぽかんとする。やはり高位の聖職者であるからか、それとも生来の感覚なのか、彼女は気づいていてすでに出来る対策を練っているらしかった。
「しかし、あと一年しか猶予がないとはとても思えません。まだおそらく数年から十数年の余裕があるかと思っておりましたが」
「うむ、ワシもそう思っておった。故にここまで行動が遅れてしまったことはほかならぬワシの失敗であろう。もっと早くから備えておくべきであった」
 おそらく何かしらの起点となるものを見つけたのだろう。それによりよそうより早く魔物の侵攻が起こると確信した王は取れる手段をとるために私たちを呼んだのだ。私は静かに王の次の言葉を待った。
「リーシアよ、グラストヘイムの地下になにがあるか知っておるか?」
「は? いえ・・・なにか、隠されているのですか?」
「うむ、いかにも。ユリア、イグドラシルについて知っておるか?」
「はい、全ての生命の源にしてルーンミッドガッツ王国、ひいてはこの世界を支える生命の樹のことです。その葉は力尽きた人をよみがえらせ、その実はあらゆる病を払い、その種は数多の生命の結晶。そしてその雫は生命を育む礎になる。伝承のとおりですとこのぐらいでしょうか」
 流石聖職者。聖典に記されているイグドラシル伝承を完璧に暗記していることに感嘆しつつ、その樹が実在するのかと私は疑った。
 それほどまでの神秘を持つ樹木なら、こぞって数多の人が探しに出かけるだろうに、いまだ発見の報はもたらされていないのだから。
「そのとおりじゃ。イグドラシルがどこにあるのかは、誰も知らぬことになっておる。おそらく南の、いまだ知られざる未開の地だとワシは思っておる。しかし・・・存在するのじゃよ、この城の地下に・・・イグドラシルの根が」
 その事実に私は唖然とした。ならばたどればよいではないか。そうすれば世界樹の恩恵を受けることが出来る。この国はさらに繁栄することだろう。
 死者もなく、病も無い国。それこそ誰もが望む理想郷ではないのか。そこまで考えて、私はふと思考をとめた。
 果たしてそれで人間は輝くのか、と。
 その答えが出る前に王はさらに会話を続けた。
「守らねばならんのだ。魔物は、イグドラシルを枯らすことを望んでおる。しかしそうなれば人の世は終わりを告げるじゃろう。なんとしても、それだけは避けねばならぬ」
 ようやく、ここに呼ばれた意味がわかった。次に続く言葉が予想できてしまい、私はその言葉を聴きたくなくて静かに目を閉じた。出来たのはそれだけだった。
「リーシア・デュセンバーグ。お主に命じる。グラストヘイムの精鋭を集め、イグドラシルを守るための組織を結成せよ。そして来る大戦の時には全力を持ってイグドラシルを守るのじゃ」
 私に・・・そんな大役が務まるのだろうかという不安がいっせいに押し寄せる。下半身の感覚がいっせいに消えうせ、どくん、どくんと心臓が高鳴るのを感じた。
「並びに、ユリア・シャープムーン。おぬしにはリーシアの補助を命じる、二人でこの任務にあたれ。シャルフィア、おぬしも出来うる限りの支援を二人にしてやってくれ」
「かしこまりました、陛下」
 下がってよいぞ、という王の言葉が、どこか遠く聞こえた。
スポンサーサイト
別窓 | 小説・ノベル | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑

<<イグドラシルの継承者 過去編 3 | 蒼月雪歌の活動録 | イグドラシルの継承者 過去編1>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL


FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
| 蒼月雪歌の活動録 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。